安保法制が注目される今国会。作家の室井佑月氏は、採決に急ぐ自民党議員たちの矛盾を指摘する。

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 政府主導で「輝く女性応援会議」などというものが開かれているが、今、女性でいちばん輝いて見えるのは、民主党の辻元清美さんのような気がして、皮肉なものだなぁと思う。なにしろ彼女は、政府を叩くことで輝いておる。

 5月28日の国会で安保関連法案について質問に立った辻元さんは、安倍さんに、「人(自衛隊員)の生死とか戦争に関わる話ですよ?」といった。そのとき、安倍さんは、「大げさなんだよ」と汚いヤジを飛ばした。

 その前に「早く質問しろよ!」と安倍さんはヤジを飛ばしている。そっちのヤジは謝罪するまでになったけど、こっちのヤジのほうが、個人的にはびっくりしたよ。だって、一国の首相が堂々と、人の命なんてどうでもいいと吐露したわけでしょう? あの方がどういう考えで、この国を動かそうとしているのかわかったような気がした。

 そして、6月5日も、辻元さんは質問に立ち、中谷防衛大臣から、重要な言葉を引き出している。

 衆院憲法審査会で参考人として呼ばれた憲法学者3人がそろって、安保法案について「憲法違反」との見解を示したことについて、辻元さんは、「政府は本法案を、一回撤回されたほうがいい」と述べた。すると、中谷防衛大臣は、「現在の憲法をいかにこの法案に適用させていけばよいのかという議論を踏まえて、閣議決定を行った」と答えた。

 つまり、俺らの作った法案に憲法を合わせればいい、そう中谷さんはいったんだ。すごいこといい出すね、このオヤジ。しかし、それが本音なんだろうと思われる。

 辻元さんが質問に立つと、まわりのオヤジ議員たちがニヤニヤしたりする。結局、輝く女を応援なんちゃらなんてやっているけど、「女のくせに」と思っているのがアリアリだ。

 そうそう、6月12日付の東京新聞の「こちら特報部」に「憲法だけ『押しつけ』なぜ」という記事が載っていた。

「安保関連法案は国会で審議中だが、骨子は四月に米国政府と合意した『新たな防衛協力指針(新ガイドライン)』に示されている。国会審議の前に米国と約束とは国民主権の無視もはなはだしいが、こうした自民党の対米追随姿勢は枚挙にいとまがない。環太平洋連携協定(TPP)交渉もその一つだ。ところが、現行憲法だけは『米国の押しつけ』と例外扱いだ。このねじれは何を意味しているのか」

 というもの。記事の中で思想家の内田樹さんは、

「戦争ができる国になる許可を米国からもらうことを自立と信じる人たちが、安保法制の成立を急いでいる。壊してよいと許されたものを壊し、満足したいだけだ」

 そう述べていた。なんて情けない。この国のマッチョなオヤジのすることは、矛盾だらけだなぁ。

 結局、この国で謳われている女性の自立も、未だこういうオヤジたちの許可のもとにあったりして。辻元さん、ファイト!

週刊朝日 2015年7月3日号

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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