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 出演するシェイクスピア劇に関する質問の江守徹の答えは、まさに“ないない尽くし”だった。トロイ戦争を描いた戯曲「トロイラスとクレシダ」は、若い頃全集で読破しているはずだというが、そのときの印象は「ない」。1972年に文学座で舞台化されたときのことは、「観たけど覚えていない」。今回の舞台に出演する動機は、「依頼があったからやるだけで、好奇心なんてものはとくにない」。時間に縛られるのが嫌いだから、舞台の稽古も「できるならやりたくない」。

「でも、俳優っていうのは一人でやる仕事じゃないからね。サボったりしたら周りに迷惑がかかるし、第一カッコ悪いじゃない? そんなことしたら、後ろ指さされるよ(苦笑)」

 子供の頃から、目立つことは好きだったという。俳優の“自分以外の人格になることができる”という部分には魅力を感じている。

「私生活で感じる以外の感情を持つことができるのが、俳優の仕事だからね。でも、人前で何かするのが好きな一方で、引っ込み思案なところもあって、今でも写真を撮られるのは苦手だし、たまらなく恥ずかしい。俺の中でも、性格が分裂してる。でも、一言でどこがいいとか悪いとか言い切れないのが人間ってもの。小学校のとき、いたじゃない? 引っ込み思案だと思ってた人間が、遠足や運動会では突然張り切ったり。俺だって、俳優の仕事が好きかと言われれば好き。でも、嫌いかと言われれば嫌いってことにもなる。何でも人それぞれだから、面白いんです」

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