今季8度目のトップ10入りを果たし、好調なプロゴルファー・松山英樹選手(23)。土壇場でみせる松山の底力に、同じプロゴルファーの丸山茂樹氏は感嘆する。

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 改めて松山英樹の底力を実感しました。昨シーズン、英樹が米PGAツアー初優勝を飾ったメモリアル・トーナメント(6月4~7日、米オハイオ州・ミュアフィールドビレッジGC)です。連覇はならなかったものの、しっかり5位に入りました。

 初日は64で首位スタートを切ったんですけど、2日目以降はショットがよければパットがダメ、パットがよけりゃショットがダメという状況でした。

 それでもトップに5打差の5位で出た最終日は、十分に持ち味を発揮しました。後半に入ってまず11番、そして13番から3連続バーディー。ただ16番パー3が痛かった。池に入れてダブルボギーです。18番がバーディーだったんで、ダボがなきゃトップまで1打差に追い込んでるんですからね。

 残り9ホールで五つのバーディー。なんでああやって土壇場で底力を出せるのか。彼の摩訶不思議なところです。「それなら前半からやれよ」と言いたくなりますけどね。何らかのパワーが、最後になってグワッと出てくるんでしょうね。スーパーサイヤ人になる瞬間みたいなのがあるのかなあ。スイッチが入るんですよね。あれはすごい。

 この5位で、英樹は今季16試合目の出場で早くも8度目のトップ10入りです。この時点ではジョーダン・スピース(米)の9度に次いで2位ですよ。どんだけ安定感あるんですか。僕の最高は2000年に7度のトップ10入りがありますけど、26試合で7度ですからね。今回英樹に抜かれちゃいましたけど、「どうぞ抜いてくださって結構」というぐらいの勢いが、英樹にはあります。

 
 英樹の次の試合は、今シーズンのメジャー第2戦となる全米オープン選手権(6月18~21日)です。

 石川遼も3年ぶりに出場します。オハイオ州の会場で最終予選会に参加して、出場権をゲットしました。立派ですよね。ただ、現時点での遼の状態で全米オープンに行って、心を折られなきゃいいなと思わざるを得ないですね。

 予選会をやるようなゴルフ場と本戦では全然違いますからね。3年ぶりだし、その辺で非常にギャップを感じるんじゃないかな?

 全米オープンはとにかく過酷です。USGA(全米ゴルフ協会)が「これでもか」とばかりに、世界一難しいコース設定をしてきますから。

 今回の舞台はワシントン州のチェンバーズベイGC。聞き慣れないのも無理はないです。07年にオープンしたゴルフ場で、まだメジャーどころか、プロのトーナメントさえ開催したことがないんですから。

 アメリカでは数少ない海沿いのリンクスコースで、コース内には木が1本しかないそうです。英樹が練習ラウンドしてきたんですけど、コースを長くとると、最長でトータル7800ヤードになるらしい。「こりゃダメだ」と漏らしてました。

 僕は今年もテレビ朝日系列で解説をさせてもらいます。この新参者のコースが、なぜ全米オープンのコースに選ばれたのか。解説していく中で、その理由を追究して、お伝えできたらいいなと思っています。もちろん日本の選手たちがどう戦うか、深く掘り下げてお届けしますよっ!

週刊朝日 2015年6月26日号

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丸山茂樹

丸山茂樹

丸山茂樹(まるやま・しげき)/1969年9月12日、千葉県市川市生まれ。日本ツアー通算10賞。2000年から米ツアーに本格参戦し、3勝。02年に伊澤利光プロとのコンビでEMCゴルフワールドカップを制した。リオ五輪に続き東京五輪でもゴルフ日本代表監督を務めた。セガサミーホールディングス所属。

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