余波は海外にも広がっていて、上海国際映画祭では韓国からの列席者に参加自粛を求めたほどだ。

 マーズはヒトコブラクダが感染源と疑われ、2012年にサウジアラビアで確認された。厚生労働省によると感染経路は正確にはわかっておらず、濃厚な接触や咳の飛沫で感染するとされ、空気感染は確認されていない。発熱や咳などの症状が出て、高齢者や疾病のある人が感染すると重症化し死に至るとされ、WHOによると、9日までで、世界25カ国で患者は1218人、うち449人の関連死亡が確認された。

 韓国で最初のマーズ感染者が確定されたのは5月20日。発症者は68歳の男性で、中東のサウジアラビア、アラブ、バーレーンなどで農作業をして帰国。その1週間後に発熱と咳の症状が現れ、地元の病院をはじめ計四つの病院を経由したため、2次感染が発生。その2次感染者が治療を受けた、韓国で最先端医療技術を誇るといわれるサムスンソウル病院から数十人の3次感染者が発生した。

 WHOは、「地域での感染は見られない」(13日)としたが、ソウル在住の主婦はこう疑う。

「どの情報を信じればいいのか。怖くて人混みに出られない」

(本誌取材班=一原知之、上田耕司、小泉耕平、長倉克枝、永野原梨香、牧野めぐみ、山岡三恵/今西憲之 菅野朋子)

週刊朝日 2015年6月26日号