「元少年A」手記 「Aは非礼では済まない乱暴なことをした」 (2/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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「元少年A」手記 「Aは非礼では済まない乱暴なことをした」

週刊朝日

「『困ったことをしてくれた』と思いました。犯罪被害者の家族のほとんどはPTSDなどに長く苦しむ。加害者への怒りと拒否の段階から少しずつ立ち上がっていかなければいけないのに、こんな突出した行動に出るとは。非礼では済まない乱暴なことです」

 手記には、小説のような「文学的」な表現が目立つ。殺害した淳君の頭部を中学校の正門に置くため家を出る場面はこうだ。

<葉型に拡がったカーテンの裂け目に両手をかけ、僕は外界の処女膜を破り、夜にダイブした>

 不可解な点もある。

 97年の家裁審判の決定文では、「スパルタ教育」だった母親から厳しく叱責され続けるなど、母親の「過干渉」がAの人格形成に大きな影響を与えたことが、かなりの分量を割いて記述されている。

 しかし手記では事件前の記述で母親との関係についてほとんど語られない一方、<母親を憎んだことなんてこれまで一度もなかった>と、これまでの「定説」に反論しているのだ。神戸家裁でAの審判を担当した井垣康弘元判事が語る。

「Aが20歳の時の少年院の収容継続審判の際、母親が『本当にあんたが(事件を)やったんやね?』とAに尋ねた。直接、息子の口から聞かない限り、信じないという母親の思いを知り、百八十度変わったのだと思う」

 前出の杉本氏も言う。

「手記では少年時代の『心の骨格の歪み』がどう形成されたのか、まとめ方が曖昧。母親との関係に正面から向き合うべきだと思う。ただ、社会復帰後の生活の記述では切迫した心情も見える。事件直後には『早く吊るしてくれ』と叫んでいたが、今は<僕は今頃になって、『生きる』ことを愛してしまいました>と告白している。それを信じたい」

 Aは12年冬に溶接の会社を辞めた後、短期バイトなどをしながら執筆を続けていたという。本当に更生の道を歩んでいるのか。

「崩れそうな自分を支えるために本で吐き出さざるをえなかったとすれば同情できるが、文章を発表することでまた人を傷つけてしまう可能性が大きい。自重と幸運を祈りたい」(杉本氏)

(本誌取材班=一原知之、上田耕司、小泉耕平、長倉克枝、永野原梨香、牧野めぐみ、山岡三恵/今西憲之 菅野朋子)

週刊朝日 2015年6月26日号


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