一部の個人投資家も浮足立つ。東京都中央区のタワーマンションに住む、金融機関に勤める30代の男性は昨年10月、「トリプル・ブル」型の投資信託を購入した。日本株市場全体の値動きに対しておおむね3倍の収益が期待できるものだ。

「購入してすぐに日銀が第2弾の量的金融緩和に踏み切ったんですよ。超ラッキーでした。3月に全部売って数百万円の利益が出ました。ご機嫌取りに奥さんの洋服を買いましたよ」

 株式市場が大にぎわいだ。バブル景気崩壊後、長引く景気低迷に「失われた20年」と言われた日本経済だが、2012年末から、日経平均は調整を繰り返しながら徐々に上がり続け、6月1日にはバブル景気以来27年ぶりに12連騰を記録した。東証1部の時価総額は600兆円の大台に乗り、バブル期のピークを上回った。

 バブルの再来かという声もあるが、過熱感があるわけではない。

 経済規模を示すGDP(国内総生産)はプラス成長が続き実質経済が回復してきているうえ、企業の業績も改善しているためだ。実態に合った株高と言える。

 株価が割高か割安かを判断する指標の株価収益率(PER)は、東証1部では17倍と、「19.5倍の米国市場と比べるとまだ割安感があります」(楽天証券経済研究所チーフ・ストラテジストの窪田真之氏)。

 日本企業に“稼ぐ力”もついてきた。窪田氏が続ける。

「バブル期と比べて、日本企業の収益構造は改善して、利益を出せる体質になってきました。負債を減らして財務内容もよくなってきています。今の株高は単なる循環的な回復ではなく、日本企業が強くなったことによる構造的な変化です」

週刊朝日  2015年6月19日号より抜粋