地震・火山国の日本は原発をやってはいけない」──。6月4日、口永良部島、桜島の噴火など不穏な火山活動が続く鹿児島に小泉純一郎元首相(73)の講演「日本の歩むべき道」が開催され、900人以上の聴衆が集まった。しかし、安倍政権は原発回帰へ舵を切っている。

 5月末に固まった「電源構成(エネルギーミックス)案」は30年度の電気をどうまかなうかを示したものだが、この中で原発の割合が20~22%と規定されたのだ。現在、一基も動いていない原発を動かさなければ達成できない数字に自民党内でも反発が広がる。

 自民党で脱原発を掲げる秋本真利衆院議員が話す。

「政府が掲げた数字をたたき出そうとすると、国内にある全43基の原発のうち、38~39基を動かさなければならない」

 小泉氏もこう切って捨てた。

「この案は『原発の依存度を低下させていく』という自民党の当初の方針と逆の方向に行っています。原発を維持したいために自然エネルギーが拡大していくのを防ぐという意図しか感じられませんね」

 運転開始から40年前後が経ち、老朽化した若狭湾の原発の使用期限を延ばそうとする審査も行われている。小泉氏は現状にこう憤った。

「原発寿命を延ばす対策をしたら、莫大なお金がかかると思います。それで政府の支援なしでやっていけるのか。政府が支援をしないと言ったらできないでしょう。それをやろうとしたら、税金の無駄遣いですね。こういうことを押し切ろうとしたら、いずれ国民にわかります。そして国民が判断をするのではないですか。民主主義というのは、最後は国民の意思で決まります」

 川内原発の再稼働を控え、脱原発の国民運動に手詰まり感があるのではないかと問われた小泉氏はこう力説した。

「再稼働するから仕方がないとあきらめないでもらいたい。現実が証明しているじゃないですか。もう2年近く、原発ゼロでやっていけている。停電ひとつ起こさない。福島の原発事故が起こる前から、脱原発運動をしていた人の本を読んでみたのですが、そういう人たちの活動を見習わないといけないと思います」

 小泉氏は細川護煕元首相らと今後、「脱原発弁護団全国連絡会の河合弘之弁護士らと意見交換する」(側近)など国民運動を続けるという。

(本誌・上田耕司、古田真梨子)

週刊朝日 2015年6月19日号より抜粋