この点について、日本年金機構の担当者は、「情報が流出した人から住所変更の届け出があれば、本人確認を徹底します。振込先の変更には金融機関の証明印が必要で簡単にはできません」と説明する。国民生活センターの関係者も「流出した被害者にターゲットを絞り、書類を偽造するといった方法は、手間がかかりリスクも高い」と説明する。

 むしろ警戒すべきは、騒ぎに便乗し、不安に駆られている高齢者を無差別に狙う従来の詐欺だという。

 実際、情報流出が公表されてから、日本年金機構や厚労省の関係者を名乗る人物からの不審な電話が各地で報告されている。

「情報を削除してあげる代わりに、手数料が必要だ」とダイレクトに持ちかけるケースは、まだわかりやすい。ここ数年は、「削除のための暗証番号」といった手の込んだ設定を組み、「伝えた暗証番号を外部に漏らしたのは違法だ」と脅して、お年寄りから数百万円単位を詐取するような手口も増加。事態は深刻だ。

 年金詐欺に詳しい社会保険労務士の北村庄吾さんもこう警告する。

「お年寄りのなかには、ニュースを全く見ておらず、無防備な人もいます。報道されているからと安心せず、家族や周囲の人間が、気を配ることが大事です」

週刊朝日 2015年6月19日号