作家・北原みのり氏の週刊朝日連載「ニッポンスッポンポンNEO」。今回のテーマは「早く質問しろよ」と国会でヤジを飛ばした安倍晋三首相について。

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「海の掃除に行くのと違うんです。(機雷掃海は)軍事作戦行動の一環なんです」

 あの日、国会での辻元清美さんの発言は冴えていた。ホルムズ海峡での機雷掃海の何が問題なのか? そのことをわかりやすく解説しながら、役人が書いた答弁をただ読み上げる(だけですよね?)中谷防衛大臣に、鋭く切り込んでいた。安倍首相の「早く質問しろよ」というヤジは、そんなさなかにされたわけだけど。そりゃ、あれ以上、辻元さんにしゃべられたら困るだろうなぁと思う。もう止めて! という心からの叫びの声だったのかもしれない。

 安倍首相は辻元さんが、お嫌いなのだろう。今回だけではない。辻元さんの質問の時の態度の悪さ(無意味にニタニタしては、質問の意味わからないけど? はいはい、僕を貶めようとしてるのね~? 等のイヤーな感じ)は定番だ。そんな調子で今回も、盛り上がってしまったのだろう。

 以前、竹田恒泰さんの講演に行ったときのこと(←取材です)を思い出した。「福島瑞穂、辻元清美は声もでかいし、何批判されようが、関係ないものね。スリッパでばんばん叩いても走り回るごきぶりと一緒!」と、スリッパでばんばん叩くそぶりを見せながら会場を沸かせて、田嶋陽子さんのことも、さんざんバカにしてた。

 
 何が可笑しいのか全く笑えなかったけど、田嶋さんや辻元さんや福島さんを貶めるだけで笑える人たちがいるんだなぁ、と驚いた。 3人の共通点は何だろう? 3人とも存じ上げていますが、本当に全くそれぞれで、似てない。もし共通点があるとしたら、「竹田さんの言うことを聞かなさそう」ってとこくらいでしょう。それでも、娯楽のように女を叩きたい人は、若くない、意見を言う、フェミっぽい……それだけで苛つくのかもしれない。

 明治天皇の玄孫というから、もう少し上品な話が聞けるかと思っていたので、びっくりした。しかも、「安倍さんが総理大臣になって、オリンピックも決まった」「オリンピックを成功させたとき、向こう数世紀にわたる(日本の)繁栄の礎が定まる」「安倍さんにはぜひ憲法9条改正してほしい!」と盛り上げていて、天皇家の親戚というより、安倍家の親戚で、安倍政権でオリンピック広報をやってる人みたいだった。

 安倍さんと竹田さん、とても相性がいいのだろうなぁと思う。そしてきっと、嫌いな女のタイプも似ているのだろう。それにしても不思議だ。美しい国を目指し、愛国を語る男性たちの、下品なまでの女性嫌悪はどう説明したらよいのだろう?

 首相は、「いま人の生死とか戦争とかについて話しています。大げさなこと申し上げたんではない」と語る辻元さんに、「大げさなんだよ」ともやじっていた。これは退陣を求められるほどの、問題発言だ。

 自分が何を言っているかわからなくなるほど、感情的な嫌悪を剥き出しにしてしまう首相。とても私の命を預けられる気がしません。

週刊朝日 2015年6月19日号

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北原みのり

北原みのり

北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。女性のためのセクシュアルグッズショップ「ラブピースクラブ」、シスターフッド出版社「アジュマブックス」の代表

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