加齢現象の一つ「腰部脊柱管狭窄症」はこんな病気

 上半身を反らせたときの腰痛や、腰から足にかけての痛みやしびれ、足の脱力感。50歳以上の人が感じるそれらの症状は、腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)であることが多い。加齢現象の一つで、60~70代に多発している。

 腰部脊柱管狭窄症の患者の腰の状態は次のようになっている。年齢を重ねるにつれ、背骨の一つひとつの間にある線維軟骨である椎間板がつぶれた形になって出っ張り、背骨の後ろ側にある太い神経(脊髄)を圧迫する。からだを反らせると腰が痛むのは、この神経が通っている管(脊柱管)が狭くなるからだ。この神経は、お尻から太ももの後ろ側を通って、足の甲と裏にまで続いている。よって、下半身にも痛みやしびれが出てしまうのだ。

 また、椎間板などの変性によって背骨の一つが部分的にずれてしまう「腰椎変性すべり症」という病気によって、腰部脊柱管狭窄症を引き起こすことも少なくない。足の痛みやしびれのほか、尿もれなどの排尿障害、歩行障害などが起こる。

 愛知県在住の田村徹さん(仮名・67歳)は、まさにこのような腰痛と足の痛みに悩んでいた。田村さんを診療した、名古屋第二赤十字病院の副院長であり整形外科・脊椎脊髄センター長の佐藤公治医師はこう話す。

「田村さんは、じっとしていると痛みはないけれど、動くと痛むと言っていました。視診や触診のほか、MRI(磁気共鳴断層撮影)検査をし、腰部脊柱管狭窄症だと判断しました」

 治療はまず、薬物療法を中心とした保存治療が3~6カ月試される。主な薬は、血流を改善する「プロスタグランジンE1製剤」、痛みやしびれを和らげる新しい薬の「プレガバリン(商品名リリカ)」があり、炎症をおさえるステロイド剤と局所麻酔薬を注射する「神経根ブロック」も検討される。神経根ブロックは、部位を探りながら注射することで、症状の原因の箇所を絞っていくことができる。

 田村さんは、神経根ブロックや消炎鎮痛剤、湿布などを併用したが、痛みは改善されなかった。定年退職し、趣味のゴルフに打ち込もうとしていた矢先に腰痛に悩まされていた田村さんは、趣味をまったく楽しめずに落胆していた。そこで佐藤医師は、ある手術を提案する。

「背骨の手術には、骨を削るなどして神経への圧迫を取り除く除圧術と、それに加え人工骨や金具を使って背骨を固定する除圧固定術、背骨の変形を正す矯正術の三つがあります。私が提案したのは除圧固定術の一つで、2005年から日本で始まったMIS‐TLIF[(エムアイエス−ティーリフ)低侵襲脊椎後方固定術]という手術です。この手術は、従来の手術に比べて回復が早いのが利点で、全国の医療機関に普及しつつあります」(佐藤医師)

 MIS‐TLIFは、患者がうつぶせになり、背中側を3~4センチ切開し、筒状の器具を入れる手術だ。筋肉をよけながら椎間関節を切除して神経を圧迫している椎間板を摘出し、さらに、長さが約2センチで厚さが約1センチの人工骨を移植する。その後、X線画像を見ながら、移植した骨と上下の椎体をネジや金属で圧着していく。

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