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 若い世代からはバカにされ、家ではないがしろにされ、職場でも常にストレスにさらされている。そんな冴えない中年男性も、一生懸命生きていれば、いつか輝く瞬間がある──。そんな映画があったらいい。

 2013年。関根勤さんが還暦を迎えた年は、芸能生活も40周年というアニバーサリーイヤーだった。同年、CS放送で、“映画を作る過程を追う番組”の企画が立ち上がり、無類の映画好きとしても知られる関根さんに白羽の矢が立った。映画製作は子供の頃からの夢でもあった。

「映画は、僕の子供時代を支えてくれた最高の娯楽でした。僕を楽しい気持ちにさせてくれて、笑うことの大切さ、素晴らしさを教えてくれた。恩師みたいなものです。とくに昔の喜劇は好きでしたね。大人も子供も、頭を空っぽにして、おなかを抱えて笑うことができた。だから、“映画を撮りたい”なんて言うのは畏れ多くてね。夢想することはあっても、“宇宙に行く”ぐらい、なしえない夢だろうと思っていました。それが、60歳過ぎてこんなお話をいただけるなんて、自分でもビックリです」

 番組の中で、アイデアを思いつくままにポンポン話していき、それを、関根さんの舞台公演でも構成作家を務める舘川範雄さんが脚本にまとめた。開発地区の騒音に悩む東京都S区に、突如地底人が現れ、人間を襲う。地底人に免疫を持つのは中年のオヤジたち。彼らはS区の救世主となれるのか──。映画製作の話を持ちかけられたときには、だいたいのプロットは頭の中にあったという。

「舞台をずっとやっていたので、演出はそんなに難しいとは思わなかったけれど、一番戸惑ったのは音楽でした。キレイな音楽を流すと、どうしてもギャグが薄くなっちゃうので(笑)。全体に、細かくギャグを入れつつ、ちょっとオヤジの哀愁も漂わせているんですが、どんなときも笑いを優先させました。全ては笑ってもらうため、中年オヤジを目立たせるために、と。ちなみに温水(洋一)さんが演じている役は、家庭での僕、そのものです(苦笑)。だから、昔懐かしい喜劇のノリを踏襲しつつも、同世代への応援歌みたいなところは、少しあるかもしれないですね」

 この一作が撮れさえすればいい。とにかく全力を尽くそう。そう思って、出演交渉もあらゆるコネを使った。タモリさん、明石家さんまさんには、「反則だとわかってはいたんですが」と苦笑いしながら、番組で共演した際に直談判したと明かす。

「オヤジが活躍するという意味では、偶然、今公開されている(北野)武さんの映画(『龍三と七人の子分たち』)にも通じるところがあるんですよね。あちらはヒットしているようなので、『龍三~』をご覧になったら、その勢いで、『騒音』にも足を運んでいただけたら(笑)。ちなみに、僕の映画のほうは50代が主役なので、軽くヤングなんです(笑)」

週刊朝日  2015年6月5日号