神崎:私は憲法上許容されるのは個別的自衛権だけだと理解していましたが、日本を救援しようとした他国が攻撃を受けた場合は、個別的自衛権の拡大解釈で可能だと考えていた。ところが砂川判決など過去の経緯を見ると、日本は個別的、集団的というのを厳密に分けて、非常に精密な解釈をしてきている。だから今回、個別的自衛権で解釈可能な分野で一部、集団的自衛権を容認しようとしていると、こう理解しています。

高村:個別的、集団的をどっちで呼ぶかというのはそれほど大きな問題じゃないけど、攻撃されているのが外国の船である以上、国際法上は集団的と言わざるを得ない。自国防衛の目的の範囲で限定容認するということです。

江田:昨年7月の閣議決定は一生懸命、限定的に書いてあると思いますよ。ただ、安倍首相のこの前の米議会演説では「アジアの海の平和」だとか、「法の支配を守るために日米同盟を深化させた」とか言っていて、これは3要件とかなり違うんじゃないか。

高村:それは、集団的自衛権ではなく、重要影響事態(※2)と関係がある部分です。

横路:周辺事態法の「周辺」を取っ払って世界中に広げたでしょ。これが問題なんですよ。いずれにしても、この問題はこれから国会でじっくり議論しましょう(笑)。

(※1)砂川判決 1957年、東京都砂川町(現立川市)の米軍基地拡張に反対する7人が基地に入り、日米安保条約に基づく刑事特別法違反に問われた(砂川事件)。一審は米軍駐留を憲法違反として全員無罪としたが、最高裁が破棄。判決は日本の自衛権について「(国の)存立を全うするために必要な自衛のための措置をとりうる」と指摘

(※2)重要影響事態 放置すれば日本への武力攻撃に至る恐れがあるなど、日本の平和と安全に重要な影響を与える事態。有事の際の支援対象を米軍以外にも広げた「重要影響事態法」への周辺事態法改正案を今国会に提出

週刊朝日 2015年6月5日号より抜粋