だが、ここにきて、不穏な空気が漂い始めてきた。前述した「国際ルール」の変更である。東短リサーチの加藤出(いずる)チーフエコノミストが解説する。
「世界中の銀行を監督するバーゼル銀行監督委員会(事務局=スイス・バーゼル)によるルール変更です。一言で言うと、国債をリスク資産とみなすようにするということ。背景には、世界的な金融緩和で国債価格が急騰(金利低下)していることがあります。このルールが適用されると、国債を保有する場合、国債の価格下落(金利上昇)に備え、資本を積み増さなければならなくなるのです」
バーゼル委員会は5月下旬にも、新ルールを発表する予定だ。適用は19年以降とみられている。
「しかし、保有する国債を前倒しで売却する日本の銀行もあると思います」(加藤氏)
金融機関が資本の増強をするためには、利益を積み上げなければならないので、それほど簡単ではない。
現在、日本政府が発行する国債881兆円(15年3月末)のうち、銀行は1割強を保有する。
銀行が売却に動いたら、どうなるのか。日本国民が保有している限り安全だという神話が崩壊する可能性が出てくるのだ。
そもそも、日本の金融機関は、日本国債に見切りを付けつつあるという。
経済評論家の藤田正美氏が言う。
「地銀関係者が“横にらみ”と言っていました。どこかが急に国債を売りに出したなんて話が出ようものなら、みんな一斉に売りに回るということです。それは暴落を意味します」
※週刊朝日 2015年6月5日号より抜粋