3回転ルッツジャンプの基礎点は6.0だが、「エッジの使い方の不正」とされると7割程度の点数になり、そこからGOE(出来栄え点)でも減点、回転不足だとさらに減点になる。

 これまでも、浅田は高難度の演技に挑戦しながらも、得点が伸びにくかった。あの女子史上初の6種類のジャンプを8度着氷したソチ五輪のフリーも、世界中から称賛される感動の演技だったが、順位は3位だった。

「浅田選手のフワッと跳ぶジャンプは決して質が低いわけではないのですが、出来栄え点(GOE)がつきにくい。羽生結弦選手は、吹っ飛んだように見える高さも飛距離も流れもあるジャンプで、ジャンプ1本多く跳んだくらいの加点がつく。キム・ヨナの『走ってる』と言われるくらいのスピードで、ボーンと跳ぶ迫力のあるジャンプや、トゥクタミシェワのボンッと高さのあるジャンプはGOEで加点が付きやすいです」(岡崎氏)

 例えば、3回転ルッツのGOEで最大の加点を取ると、8.1になる。そうなると、大技のトリプルアクセル(基礎点8.5)と同じくらいの得点になるのだ。

 浅田自身もそれは覚悟しており、「今24歳でスケート界の中ではベテラン。ジャンプの技術を落とさないだけではなく、大人の滑りを見せたい」と語っている。岡崎氏もこう話す。

「ジャンプは、訓練次第でよりスピードをつけてGOEの取れるジャンプが跳べるようになるはずです。彼女は演技中のどの瞬間の写真を撮られても、隙がない選手。そういうところも5コンポーネンツ(演技構成点)で評価されれば、世界の舞台に戻っていけるはずです」

 浅田真央の第二章。どんな大人の演技を見せてくれるのか。

週刊朝日 2015年6月5日号