各社ともに通信販売のほか、店頭での販路を広げ、ドラッグストアなどで積極的に販売している。

 東京都練馬区の幹線道路沿いにある、ドラッグストアのスギ薬局関町北店の店内をのぞくと、陳列棚には約30種類のレトルトパウチタイプの介護食が並んでいた。値段は100円台とお手頃だ。

「有料老人ホームや在宅で療養する人に薬を届けるときに、『こんな便利なものがありますよ』と、介護用品に関する情報を提供します。そのなかで介護食を紹介したところ、有料老人ホームに入居されている方から『施設の食事では食べられないから、すき焼き味の介護食が食べたい』と注文がありました」(関町北店薬剤師の小川昌孝さん)

 全国の店舗では、健康相談や、在宅医療を行う過程で介護食の普及に努めている。広報によると、関町北店では前年比1.3倍、なかには5倍のペースで売り上げが伸びている店舗もあるという。

 さらに、介護食の広がりは栄養摂取だけにとどまらない。スイーツも登場した。

「ハレの日にはケーキが食べたい」という声に応じて、歯科医療機器メーカーのジーシーと、世界で活躍するパティシエの辻口博啓さんが、かむ力やのみ込む力が弱い人でも食べられるケーキ「EASY SWEETS」を開発した。

 ジーシー本社(東京都文京区)に隣接するショールーム兼カフェ「Kamulier(カムリエ)」内で食べられるほか、お取り寄せでも販売している。

「嚥下障害のある方は、のみ込みやすさを重視して、ゼリーやムースのようななめらかなデザートを召し上がることが多いと思いますが、本当に食べたいものをうかがうと、ショートケーキのような『スポンジ感』のあるケーキでした。昔に食べたケーキの思い出そのものであり、甘いものを食べたときの幸福感も味わえるのだと思います」(辻口さん)

週刊朝日 2015年5月29日号より抜粋