カープ女子や黒田博樹投手の復帰で注目が集まる広島に、“鯉の妖怪”がいる。

「鯉城」とよばれた広島城のお堀の鯉の妖怪「コイっしー」。広島市を流れる太田川と行き来していたお堀の鯉たちが、川と堀が分断され、お堀に帰れなくなってしまった。そんな鯉たちの「帰りたい」思いがひとつになって2014年に生まれ変わった妖怪だという。

「『妖怪ウォッ○』や『○なっしー』に乗っかっていると言われることもありますが、あくまでオリジナルのキャラです」

 と、「広島の鯉を励ます会」事務局の吉田かおりさんは言う。そんなコイっしーは、あくまで妖怪そのもの、“中の人”などいないという。どうやって連絡するのかと言うと、「メールを送ってください」。

 妖怪だがメールはやるらしい。そんなわけで、コイっしー“本人”に、メールでインタビューしてみた。

 まずコイっしーの“中の人”についてたずねると、

「中には鯉の魂が入っているのよコイ!」

 やっぱり語尾がちょっと誰かに似ている。

 ところで広島には、「ブンカッキー」という、広島特産のカキをモチーフにしたキャラがいる。文化庁のイベント「国民文化祭・ひろしま2000」のキャラクターで、みうらじゅんが「ゆるキャラ」を思いつくきっかけになったキャラだが、

「住む場所が海と川でちょっと違うけど、同じ水の中の生き物として尊敬しているのよコイっ」

 広島カープ風のユニホームを身に着けているコイっしーは、もちろん大のカープファン。開幕前の注目度はトップクラスだったが、5月13日時点でのセ・リーグ順位は5位と苦戦中。

「コイっしーが得意の妖術、“鯉の滝登り”を使って立ち直らせるのよコイ!」

 とは言うものの、コイっしーは、マツダスタジアムの中に入ったことは、ない。

「カープ非公認の身としては、ノコノコ入っていったら叩き出されそうで……」

 ちょっと弱気になっていた。

(秦正理)

週刊朝日 2015年5月29日号