ポジティブではあるけれど、生きることに執着していない。医療の進歩でがんは早期なら治ることもありますが、現実問題として日本人の死因の1位。いろいろな最期の迎え方はあるけれど、人は死に方を選べないんです。

 僕自身はがんで最期を迎えるのは、決して悪くはないと思う。ゆっくり身辺整理をして、大切な人に感謝の気持ちを伝え、どうやって終わらせるか。緩和ケアも進んでいて、さまざまな苦痛を軽減させられますしね。

 がん患者になってプラスだった面はスポーツジムに行くようになり、3年前にはホノルルマラソンを完走したこと。一病息災とでもいうんでしょうか。PET‐CTや超音波、内視鏡、MRIの検査は定期的に受けていますし、食事内容にも気を配り、体調をコントロールするようになった。75歳の今も仕事への意欲はまったく衰えていない。

 最期の時間をどう過ごすかも取材テーマの一つになりました。親鸞は晩年、師である法然から聞いた「愚者になりて往生す」という言葉を門弟に残した。僕もそんな心境で晩年を迎えるのが理想です。

週刊朝日 2015年5月29日号