10年になり、ふと考える。もうやる職業ないんじゃない?てことで、南極にタロジロを探しに行ってみた。一文無しにもなってみた。むしろ人間でなくてもいいかもって、アンドロイドにもなってみた。どうかしてるぜ! テレビ局。

 常に「どう演じるか」ではなく、「キムタクが何になるか」を求められ続けてきた。その彼が、初めてテレビ朝日と組んだ主演ドラマ「アイムホーム」。記憶を失ったサラリーマンが、自分探しをする物語だ。

 そう、一度すべての記憶を抹消した方がいいかもしれない。まっさらになり、改めて自分を振り返る。きっと彼は驚くだろう。

 俺、小田和正をBGMに空中で大爆発してる!(「安堂ロイド(略)」)

 俺、丹波篠山で猟銃自殺するかと思ったら、イノシシと心の対話してる!(「華麗なる一族」)

 俺のセリフ、第1話から「メイビー、君は俺を好きになる」って、しかも「ほんのり甘い……だけどメイビーちょっぴりビター」って何?(「プライド」)

 こんなセリフも真顔で言えた00年代。そりゃ途方にくれるって。

 ドラマ「アイムホーム」の主人公には、妻と子供の顔が仮面のように見える。

 けれど今、仮面をはずしたいのは木村拓哉自身ではないか。みんながよく知りすぎているあの「キムタク」という仮面を……。

週刊朝日 2015年5月29日号