「改憲推進勢力にとっては、国民投票で過半数の賛成票を確保するためには母集団を増やしたほうがよい。18歳、19歳が改憲に向けた数の工作に使われてしまう懸念があります」

 法案の共同提出に加わらなかった社民党と共産党も理由は同じだ。

「選挙権の18歳化は、改憲の国民投票と合わせる意味があると思います」(社民党の福島瑞穂副党首)

「改憲を狙う国民投票のために選挙制度を変えることが今回の18歳選挙権の前提。引き下げには安倍政権の思惑がある」(共産党の穀田恵二国対委員長)

 他国を武力で守る集団的自衛権の行使を可能にする武力攻撃事態法改正案など安保関連法案が国会に5月15日、提出されたことから、18歳選挙権自体、戦争を想定したものではないか、と懸念する声もある。政治評論家の有馬晴海氏が言う。

「日本では20歳でもまだ子供と言われている。それなのに18歳に無理やり選挙権を与えることに誰も違和感を覚えない。18歳選挙権のある国では、徴兵するに当たって同時に意思表示の権利を持たせる意味合いがある。日本も同じことを想定しているのではないか」

 こうした意見が出てくるのは、18歳選挙権と憲法改正のための国民投票年齢がリンクしているからだ。

 国民投票年齢を18歳以上と定めた「憲法改正国民投票法」が成立したのは、第1次安倍内閣の07年(施行は10年)。このとき、選挙権年齢が20歳のままでは法的な整合性が保てないとの議論になり、選挙権が18歳に引き下げられるまでは国民投票も20歳にするとの付則をつけた。

 しかし、公選法改正がその後一向に進まないことから、昨年6月には国民投票法を改正。国民投票の年齢を、4年後となる18年から自動的に「18歳以上」にした経緯がある。

 今国会で選挙権年齢が18歳に引き下げられれば、国民投票権も自動的に18歳となる。そうしたこともあり、「18歳選挙権への流れそのものが、改憲を進めたい安倍政権の思惑に沿ったものだ」という批判が出ているのだ。

週刊朝日 2015年5月29日号より抜粋