だが、根本的な問題は別にある。“読み”の甘さだ。
「本来なら中小型液晶の専用工場をつくるべきだった。中小型液晶の生産には向いていない、大型液晶向けの亀山工場を転換しながら生産してきた。これでは需要の急速な変動に対応が難しい」
と、調査会社のディスプレイサーチの早瀬宏上席アナリストは言う。
シャープにとって液晶パネルは売り上げの3分の1を占める。スマホ向けに引きが強い中小型液晶は再建をけん引するはずだった。だが、中小型液晶への投資がなおざりになっていたのだ。大型液晶の成功体験からなかなか抜け出せなかったうえ、競合他社の動向の読みが甘く、後れを取ったという。
元シャープ液晶研究所技師長で『シャープ「液晶敗戦」の教訓』の著作がある中田行彦・立命館アジア太平洋大学教授は、「シャープの再生の肝は中小型液晶パネルだ。中国スマホ市場をテコ入れするべき」と指摘する。
ところが、今回発表した再建計画は「カンパニー制導入」「人件費削減」といった表面的に取り繕った内容ばかり。これまで報道されていたような液晶事業への投資や分社化、不採算事業からの撤退といった具体策からはほど遠い。
骨抜きの再建計画となった理由を、企業再生に詳しい森・濱田松本法律事務所の藤原総一郎弁護士はこう見る。
「統治体制に問題がある。シャープはもともと独立心が強い会社。メインバンク2行と三すくみ状態になり、抜本的なところまで踏み込んでスムーズに進められていないのではないか」
さらに前出の友田氏は、こう苦言を呈する。
「場当たり的な対応で、一貫性が見えない。『減資1億円』のように現実味のないことを打ち出したのは、再建の本気度をアピールするためのパフォーマンスかと勘繰りたくもなる」
※週刊朝日 2015年5月29日号より抜粋