大阪都構想の住民投票を翌日に控えた5月16日夜。 ナニワ一番の繁華街、なんば駅前で最終日の街頭演説に臨んだ橋下徹・大阪市長は、反対派と思われる聴衆の一部から「黙れ」コールも巻き起こる中、笑顔も見せながら必死に訴えた。
「僕は嫌われる政治家ですよ。僕はただの45歳の男ですよ。僕に力を与えてくださいよ。明日負けたら本当は死ななきゃですけど、民主主義ですからね」
実はこの5時間程前、安倍晋三首相もなんば駅のホームに現れた。特急列車で高野山に向かうためだ。
「安倍さんやぁ」
大勢の人が集まり、首相は上機嫌で自ら駆け寄り握手をしまくった。
神戸と和歌山・高野山の視察のため、朝から関西入りしていた安倍首相がわざわざ、なんば駅を経由したことで、マスコミの間でこんな噂が駆け巡った。
「ひょっとして都構想を応援するため、橋下さんと会うかもしれない」
だが、ハプニングはなく、安倍首相は予定どおり、高野山へ旅立っていった。
かつての“上司”が悲壮な戦いを繰り広げていた同じ夜。あの“浪速のエリカ様”こと上西小百合衆院議員(32)が、「独演会」のため、大阪市内のライブハウスに現れた。
「あたしはシャネル一着も持ってないです。タグ見ます?」と笑顔を見せた。
「濃い」と話題になったメイクについては「下手なんです」と認めつつ、特に辛口批評されていた下まつ毛のマスカラについて「古いマスカラだから、ちょっとダマになってるのかなって」とサービストーク。
肝心の都構想について、“爆弾発言”が飛び出すかと思いきや、
「そんなやわな構想ではないですから大丈夫だと思います。みなさん、17日は足を運んでいただきたいです。よろしくお願いします」
「棄権しないで行ってほしいなあって」
と、党を離れても気持ちは変わらないと強調。
維新の党についての恨みがあるのか聞かれると、
「私は政治家としてのお仕事をさせていただけるというのは維新の会とか党を立ち上げた先生がたのおかげだと思ってるし、それに関しては今も感謝している」
と“優等生コメント”で余裕の肩すかし。
大阪都構想決戦で最後に笑うのは、果たして誰なのか……。
(本誌取材班=一原知之、小泉耕平、牧野めぐみ、山岡三恵/今西憲之、黒田 朔)
※週刊朝日 2015年5月29日号