その結果、池高野球部のOBが「凝視できません」と言うほどのソックリ具合になった。当時90代で存命だった奥さんには、「帽子、脱がな(似てるか)わからん」と言われたそうだ。

 蔦監督は、40代以上なら野球に興味がない人でも知っている有名人だが、

「赤ちゃんは泣くし、30代以下は『誰?』と言う。『似てる!』『懐かしい!』と言って寄ってくるのはお父さんたちで、抱きついてくるのはおばちゃんだけ(笑)」

 いまや池田町名誉町民としてすでに「偉人化」してしまったために、奇妙な事態も起こっている。

「今の池高生には、蔦監督のことをよく知らない生徒もいるんですよ。学校の銅像も、二宮金次郎くらいに思ってるみたいなんです」

 かつての猛将は今、若い世代へのアピールもしながら、地域の奉仕作業やイベント、老人ホーム慰問などで、池田に貢献している。

週刊朝日 2015年5月22日号