※イメージ写真
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 詩人、エッセイストの佐々木桂さんが、日本津々浦々に残る田園風景とその米を紹介する本誌連載「美し国、旨し米」。今回はお米界の優等生「コシヒカリ」を取り上げる。

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 日本を代表するお米は数あれど、コシヒカリを抜きには語れまい。知名度はもちろん、作付面積も国内の4割近くを占め、ダントツの1位。粒が大きくて見た目も美しく、モッチモチの食感に甘い味わい。おかずなしでも食べられて、さめてもおいしいのだから、まさに主食中の主食といえるお米である。

 コシヒカリの血統を遡ると、お米の人工交配がおこなわれる前の東西の雄、「亀の尾」と「朝日」に辿り着く。血統はいい。だが、弱点があった。いもち病に弱く、背が高くて風で倒れやすい。生まれた頃の「コシヒカリくん」は劣等生だった。

 それをいろんな人がサポートし、栽培方法を改良して、今の優等生、コシヒカリくんがある。米と人間がタッグを組んだ努力の結晶なのだ。その後、気温にも左右されず、一定の収穫を約束するという真面目な性格が開花。コシヒカリは全国にその名を轟かすこととなった。

週刊朝日 2015年5月22日号