コンプライアンス違反を戒める? 不倫、妊娠題材の文楽 (1/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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コンプライアンス違反を戒める? 不倫、妊娠題材の文楽

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 今も昔も男の苦難は一緒。不倫相手の妊娠に、跡目争い……現代のサラリーマンにも身を置き換えられる泥沼を描いた浄瑠璃がある。どんな物語なのか、次世代を担う文楽太夫の一人、豊竹咲甫大夫さんが紹介する。

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 先日、お亡くなりになった三代目桂米朝師匠が得意とされていた噺に「胴乱の幸助」という上方落語があります。

 大阪の街で喧嘩を見つけては仲裁に走る正義感の強い男が、ある日通りがかった浄瑠璃の稽古屋の前で、「親じゃわやい」「あんまりじゃわいな~」という嫁イジメの台詞を耳にします。それを本物のもめ事と勘違いし、仲裁しようと、浄瑠璃の舞台である京都まで行ってしまうというマヌケなお話。

 この浄瑠璃が、五月に東京の国立劇場小劇場で上演される「桂川連理柵(かつらがわれんりのしがらみ)」です。一七七六年の初演後、大阪や京都の庶民の間で「お半長」という呼び名で親しまれていた名作です。

 このお話は、京都の帯屋の主人・長右衛門が隣の信濃屋の娘・お半と不倫する泥沼な筋立て。当時の帯屋とは帯を売るわけではなく、顧客の欲しい物を代理で探したり、為替を扱ったりする、御用商人に近い商売です。長右衛門の帯屋は遠州の大名屋敷に出入りしていたことから、それなりの格があったと推測できます。その帯屋の主人というポストが一度の不倫で脅かされます。

 まずは、お半に片思いする信濃屋の丁稚(でっち)に、長右衛門が大名から預かっていた大切な脇差しを偽物とすり替えられます。帯屋ではさらに、長右衛門の継母とその連れ子がこれ幸い店を乗っ取ろうと、不倫話に輪をかけて、店の金をくすねたと騒ぎ立てる始末。長右衛門の妻であるお絹が機転を利かせて事なきを得たものの、一夜限りの過ちでお半は妊娠してしまいました。


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