「オバマ米大統領は、米国と中国を対立させないことを基本にしている。だから、日本には中国や韓国と良好な関係を築いてほしい。そのためにも、侵略戦争を認めた『村山談話』の踏襲を訪米中に明言してほしいが、安倍首相はしたくない。そこに日米両国の溝がある」

 安倍批判をした外国メディアに、圧力と取られかねない抗議をしていたことも暴露されている。

 ドイツの保守系高級紙「フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング」のカーステン・ゲルミス元東京支局長は、日本外国特派員協会の会報誌に寄せた手記でこう書いている。

<私が安倍政権の歴史修正主義に批判的に書いた記事が掲載されると、フランクフルトの日本総領事が、(中略)中国がこの記事を反日プロパガンダに利用していると抗議した>

 さらにその総領事はゲルミス氏をスパイ扱いし、「(中国の)カネが絡んでいると疑わざるをえない」と話したと書かれている。

 前出の高野氏は言う。

「安倍首相は欧米メディアから、軍事強国を目指していて、そのためには異論を排除し、言論を抑圧する『反民主主義者』と思われている。それが欧米メディアの怒りにつながっている」

 政権与党の自民党NHKとテレビ朝日の幹部を呼び、番組内容について事情聴取をしたことも、欧米メディアの安倍不信に拍車をかける結果になった。

 国境なき記者団がまとめる「世界報道自由度ランキング」(2015年)で、日本は61位。東京電力福島第一原発事故以前の11位(10年)から急落している。安倍政権が続くかぎり、順位の上昇は望めそうにない。

(本誌・西岡千史)

週刊朝日 2015年5月8-15日号