自民党NHKとテレビ朝日の幹部から番組内容に関して事情聴取したことについて、作家の室井佑月氏は暴力団みたいな行為だという。

*  *  *

 とうとう対面式で本格的な恫喝か。

 17日付の毎日新聞によると、「自民党の情報通信戦略調査会(会長・川崎二郎元厚生労働相)は17日午前、党本部で会合を開き、NHKとテレビ朝日の報道番組で、『やらせ』や政治的圧力があったとされる問題について、NHKの堂元光副会長、テレビ朝日の福田俊男専務らから聴取した。川崎氏は冒頭、『二つの案件とも真実が曲げられた放送がされた疑いがある』と指摘し、両社から説明を受けた」という。

 NHKのやらせ問題は置いといて、テレ朝は官邸から番組への圧力があったかどうかが問題になっているのに、頭がおかしいのかしら。

 それかピンチをチャンスにという発想で、せっかくの機会だから、ほかへの見せしめのためにも徹底的にやっておくか、そう考えたのかしら。

 どっちにしても、まともじゃないよ。ああ、恐ろしい。ひと昔まえの暴力団みたいだ。

 同じく毎日新聞によると、「(自民)党幹部は『政府側の人間や官僚OBを入れるなど別の方法もある』と述べ、政府がBPO(放送倫理・番組向上機構)に一定程度、関与できる仕組み作りは可能との認識を示した」という。

 メディアは権力の監視という重要な役目がある。が、そこは知らないふり。

 
 やっぱ、ひと昔まえの暴力団だわ。相続放棄すれば親の借金は背負う必要がないのに、すごんで娘から金を搾り取るみたいな。嫌がらせをし、これ以上されたくなかったらといって金を要求するような。

 おまわりさーん、と警察に駆け込みたくなるようなレベル。が、そういう真似をしているのが、この国の中枢の人々だから参る。

 このことについて、朝日新聞は「国はテレビ局に対し、許認可や行政指導の権限を持つだけに、政権を握る自民のこうした対応が、報道の萎縮につながるおそれがある」と書いていた。

 つながるおそれって、なにをすっとぼけておるのじゃ~。ちょっと前に自分たちが攻撃の矛先になっていたからだな。この書き方はあきらかにおそれておる。

 東京新聞は「NHK、テレ朝 抗議なく受け入れ 自民が事情聴取」とメディアの弱腰を嘆いていた。読売新聞と産経新聞と日経新聞は社説などの小さなところで、そういうことがあったという程度。なんかとても感慨深いわ。

 それにしても、おかしくね? テレビ局に圧力があったかどうかが問題になっているのに、なぜそこを各社とも徹底的に洗わないの?

 自分たちのところには以前どんなことがあったかをすべて書き出し、それを圧力と思うか、思わないか、その徹底検証をやるべきでしょう。金もかからん取材だし。

 結局、みんなこのことを直接自分たちの問題にするのは怖いみたいね。自分とこには一つもなかったって? 逆に、ものすごい圧力があるように見えますよ。そう考える国民は、多いんじゃない?

週刊朝日 2015年5月8-15日号

著者プロフィールを見る
室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

室井佑月の記事一覧はこちら