加瀬邦彦 ザ・ワイルドワンズAmazonで購入する
加瀬邦彦 ザ・ワイルドワンズ
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「想い出の渚」で知られるザ・ワイルドワンズのリーダーで音楽家の加瀬邦彦さんが4月20日に死去した。享年74。事務所は自死と発表。昨年3月に下咽頭がんを手術、復帰を目指してリハビリをしていたが思わぬ別れとなった。加瀬さんは、どんな人だったのか。

「オシャレな先輩でした」

 と話すのは、慶応大学の後輩で昭和文化に詳しいコラムニストの泉麻人さんだ。

「僕が小学校高学年だった1960年代後半にワイルドワンズがデビューして、エレキを中心としたグループサウンズ(GS)が大人気でした。ザ・タイガースやザ・テンプターズが不良っぽいのに対し、加瀬さんは品(ひん)を追求されました」

 60年代はビートルズの世界的ブームで、加瀬さんも影響を受けた一人。音楽シーンがポップ、フォーク、ロックと分かれる中で、加瀬さんはGSのイメージを、「より明快にして世に浸透させた」(泉さん)。

 加瀬さんの洒脱(しゃだつ)さは壮年になっても変わらず、2008年にあった慶応義塾創立150周年のイベントでは“慶応カラー”の青と赤のブレザーを粋に着こなしていた。泉さんがブランド名を聞くと、「これコム・デ・ギャルソンなんだ」と、にっこり答えたという。

 とにかく穏やかな人だった、と話すのは音楽評論家の湯川れい子さんだ。

「加瀬さんとは50年来、お仕事でも数々の接点がありましたが、怒った顔を見たことがない。人との間にヒエラルキーをつくらず、そこが魅力的でした」

 グループ内にもその公平性を持ち込んだという。

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