ドローンが落ちた官邸の屋上を調べる警視庁の捜査員ら (c)朝日新聞社 @@写禁
ドローンが落ちた官邸の屋上を調べる警視庁の捜査員ら (c)朝日新聞社 @@写禁

 首相官邸(東京都千代田区)の屋上に落ちているのが4月22日に発見された小型無人飛行機「ドローン」。積まれていたボトル状の容器からは微量ながら放射性物質が検出され、福井県に住む男が威力業務妨害の疑いで逮捕されたが、官邸の危機管理の甘さが指摘されることにもなった。

 ドローンは無線での遠隔操縦や自動操縦プログラムによって、自由に空を飛び回り、カメラを積載して動画撮影もできる。東京・秋葉原のヨドバシカメラでは週に十数機のドローンが売れ、現在は入荷待ち状態。数十万円以上のものもあるが、売れ筋は6千〜7千円の低価格のものだという。

「昨年のソチ五輪や香港の民主派デモの様子を空中から捉えた臨場感ある映像や動画投稿サイトの映像によって、急速にドローン人気が高まりました。アメリカでは父親へのクリスマスプレゼント人気ナンバーワンです」(秋葉原でカルチャーショップ「クリエイトミー」を営む春原久徳さん)

 今回の事件を受け、ドローンの登録制や飛行禁止区域の拡大など規制を強める動きがあるが、販売済みのドローンをすべて掌握するのは難しいだろう。今後はドローンを使ったテロや犯罪が増えていくのだろうか。

 軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏はドローンのテロの可能性について、「無視はできないが」と前置きして、こう話す。

「今の市販のドローンに屋上を吹っ飛ばせるような爆発物を積むのは難しい。サリンや炭疽菌(たんそきん)を散布する可能性も考えられるが、それらの物質の入手が難しいし、開いた窓からドローンを侵入させる技術が必要になる。ドローンで建造物を襲うテロは現実的ではない」

 もう一つ気になるのは、空中からの盗撮やプライバシー侵害などの問題だ。ロボット関連の法などに詳しい小林正啓弁護士が言う。

「そういう考えを持つ者はいるだろうが、今のドローンの能力やコストを考えると、リスクが高いから現実的ではないのでは。ただ、今後、技術が向上し、追跡機能が備わるようになると、ストーカーなどの犯罪行為で使われる可能性が高まるかもしれません」

 空からの“のぞき”を防ぐ方法はあるのか。ドローンは「オスのミツバチ」を意味するだけあり、「飛行中はかなり大きい音がする」(春原さん)。上空の音に耳を澄ますのが、今できる最大の防犯対策のようだ。

(本誌・山内リカ)

週刊朝日 2015年5月8‐15日号