日本プロゴルフ界の若きエース・松山英樹(23)。プロゴルファーの丸山茂樹は本誌連載で、松山はパットの向上次第でメジャーでの優勝争いもあると分析する。

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 この連載もめでたく100回目を迎えました。これからもゴルフはもちろん、ほかの分野についても丸山茂樹らしく、まっすぐに前向きに語っていきたいと思います。

 今回はもちろんマスターズ(4月9~12日、米ジョージア州オーガスタ・ナショナルGC)です。最初に言っておきたいのが、今回はゴルフ場がイージーすぎましたね。もう「パッティング選手権」みたいになっちゃって、パットが入ったもん勝ちの試合でした。

 それにしても一度もトップを譲らない完全優勝を果たした21歳のジョーダン・スピース(米)は立派。さすがパット職人ですね。最終日の18番ホールがボギーで、惜しくも大会史上最多アンダーパーの新記録は逃しましたけど、1997年のタイガー・ウッズ(米)に並ぶ通算18アンダー。去年のマスターズで最終日を首位タイで迎えながら2位に終わった悔しさを、しっかり1年後に晴らしました。

 松山英樹は初日から71、70、70、66で5位。最終日がロリー・マキロイ(英)と並ぶベストスコアだったから、「3日目までがもったいない」と思っちゃいますけど、そんなのみんな同じことで、それが誰でもできるんだったら、みんな優勝しちゃいますからね。英樹は5位に「微妙です」って言ってるそうですけど、最終日の66があって、報われたと思いますよ。

 僕は大会前に「英樹はパット次第」と言ってたんですけど、その通りになりました。米PGAツアーでは「スコアに対するパットの貢献度」を示すデータがあるんですけど、英樹は113位と苦しんでますから。マスターズもパットさえ入ってれば、2位には入ってたでしょうね。

 
 どうすれば英樹のパットが向上するのか。いやあ、それは僕にも未知数なんですよね。彼にどんなことが起きてて、どんなふうに思ってるのか。実際に会って話してみないことには分からない。テレビで見てる分には、ものすごくいい感じなんですよね。

 若干ラインの読み違えなのか、「入れたい」と思う気持ちから、ストローク中に力加減がうまく伝わってなかったのか。そんな感じじゃないかと思いますけどね。「入れたい」って気持ちが強すぎて力がフッと入っちゃったり、逆に力が抜けたりすることって、ありますからね。

 いずれにせよ、これまで何度も言ってますように、英樹はいつメジャーで優勝争いしてもおかしくないステージに来てますよ。

 さて、タイガーです。2月の試合で途中棄権して休養に入り、練習を積んでの復帰戦になりました。通算5アンダーの17位に、本人は「ここまで戻るのにどれだけ苦労したかは誰も知らないけど、僕は満足してる」とコメントしています。

 でも僕が見た限り、復調には、まだ遠い気がします。ティーショットはミスだらけ。休養前と同じ状態で臨んだんだろうと思います。僕は「アプローチはイップスになってない」と言ってきましたけど、その通りで、しっかり寄せてました。それにタイガーはオーガスタを知り尽くしてる。マスターズだからこそ、そこそこの結果を残せたんでしょうね。

週刊朝日 2015年5月1日号

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丸山茂樹

丸山茂樹

丸山茂樹(まるやま・しげき)/1969年9月12日、千葉県市川市生まれ。日本ツアー通算10賞。2000年から米ツアーに本格参戦し、3勝。02年に伊澤利光プロとのコンビでEMCゴルフワールドカップを制した。リオ五輪に続き東京五輪でもゴルフ日本代表監督を務めた。セガサミーホールディングス所属。

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