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 まったくの“青天の霹靂(へきれき)”だった。飲みに行くような仲でもなければ、過去に映画への出演を打診されたこともない。北野武監督から、映画の出演依頼が来ているという話を聞いたとき、藤竜也さんも最初は「新手の詐欺じゃないか?」と疑ったほどだ。

「クリエーティビティーにしてもオリジナリティーにしても、世界的な評価を受けている北野さんが、70過ぎのジジイばかり集めて映画を撮るっていう。それが娯楽映画として成立するのか。だいたい、撮影が終わるまで、全員生きているかどうかもわからないわけです。でも、今に至っては、全ての不安が払拭されました。北野さんは、吸血鬼です。私のわずかながら残っている力を、フルに吸い出してくれたという意味では、とても有り難いドラキュラです(笑)」

 北野武監督の最新作「龍三と七人の子分たち」で引退した元ヤクザを演じるのは、藤さんをはじめとした、平均年齢72歳のベテラン俳優たちだ。藤さんは、アクションはもとより、既存のイメージにない芝居にも挑戦。「身体も精神も、全てを北野監督に捧げました」と撮影当時を振り返る。

「抵抗なんて全然。今までやったことのないことに挑戦できたから、むしろ嬉しかった(笑)。何でもおもしろがる体質で、イメージをぶち壊してもらいたいんです」

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