その後、沿岸部から経済発展は加速し、日本を抜いて世界第2位のGDPを誇るまでになった。そこにスマートフォン革命がやってきた。格安のインターネット環境が整備され、Androidベースの格安スマートフォンが、シャオミーをはじめとする中国国産メーカーから供給されることになり、多くの国民がスマートフォンを手にすることになった。すでに世界の工場は世界最大の市場に変貌していたのだ。

 そしてアリババ・グループは短期間に世界有数の時価総額を誇る巨大企業へと変貌した。こうした「チャイニーズ・ドリーム」が、今や世界に出ずとも可能になったわけである。当分は欧米や日本で流行りつつあるサービスをコピーして「タイムマシーン経営」をするだけでも簡単に成功することができる。以前は地域によって教育の格差はあったが、今やスマートフォンひとつで簡単に最先端の知識にありつくことが可能な時代である。

 さらにモバイルブロードバンドのインフラは電話線も引かれていなかった田舎にだって簡単に導入できる。ネット系企業を中心に、今後しばらくはこのムーブメントが続くと思われる。

 さて、日本の若者の起業に対するモチベーションはどうだろうか? すでに中国は発展途上国ではなくなっている。上昇志向という点ではすでに追い越されている状態かもしれない。のんびりしている場合ではないと思う。

※とう…環境依存文字のため、ひらがなで表記。元の字は1文字で「登」におおざと
週刊朝日 2015年5月1日号