最後の場面。認知症予防運動。太ももを高く上げて足ぶみをする。かなりきつい。この状態で4人でシリトリをする。マスター役、山本哲也アナウンサーが「チョイス」の「ス」とお題を。浜島さんが「スズメ」と言って始まった。次がほっしゃん。バトンはぼくに渡されて速い展開。2巡目にほっしゃんは「火事」と「じ」で終わらせた。ぼくは詰まった。ぼくが認知症早期治療と同時に悩んでいる「痔」が浮かんでしまった。いぼ痔、切れ痔。そういうんじゃない。「じ」で始まる言葉だ。事件、自伝、時間、思い出すのは「ん」で終わる禁止語。事件の後ろに「記者」をつければよかったのに頭が真っ白になっている。何とかごまかした。次も「じ」が来た。「地面」と言ってずっこける。隣のマスターがひそひそ声で「乗り物で」と助け舟を出してくれた。ようやく「自動車」が出た。

 一回りすると、また、ほっしゃんは「じ」を投げてくる。「うーん、じ、じ、自転車」。6巡目か浜島さんが「マントヒヒ」と言った時点でほっしゃんがニタッと笑って「ひじ」と言うのがわかった。ほっしゃんは鬼である。苦しむぼくの顔を見て、マスターが「はーい、ジ間です」。太ももが痛いのと、恥ずかしいのとで背中に汗が流れた。

 ほっしゃんにいじくり回された1時間だった。脳は随分と回復しているはずと思っていたが、まだまだ。感想を聞かれ「もっとトレーニングしないと。いい勉強になりました」。ほっしゃんは優しい言葉をかけてくれ、ぼくと握手をした。嬉しかった。

 収録後に共同記者会見。山本マスターや浜島さん、ほっしゃんが質問に答えた。ぼくは、出演者から取材者の席に。放送開始3年目になる「チョイス」の番組中の検査でほっしゃんは異常に気づき、「網膜剥離」が見つかったという。本音のツッコミで人気のほっしゃんの迫力に押されて、ぼくは質問を忘れてしまった。

 27日の放送は、最後の「ジの呪い」では布団を頭からかぶっているつもり。みなさんで、ぼくのボケ奮闘ぶりを笑ってください。ボケてたまるか。第2幕の幕開けである。

週刊朝日 2015年5月1日号より抜粋