手術には、背中側から神経の通る脊柱管を広げる「後方法(椎弓[ついきゅう]形成術、後方除圧固定術)」と、首の前側から骨化部位を摘出する「前方法(前方除圧固定術、骨化浮上術)」がある。手術方法は、骨化の位置、大きさや形態、患者さんの症状、年齢などにより決められるが、一般的には後方法が選択されることが多い。

 筑波大学病院整形外科教授の山崎正志医師は、CT(コンピューター断層撮影)で骨化の形態を、MRI(磁気共鳴断層撮影)で脊髄への圧迫の程度などを検査し、手術法を検討。岡本さんの「仕事に早く復帰したい」という希望を考慮し、術後の負担が比較的軽い後方法での手術を決めた。

 一般的な後方法(椎弓形成術)は、背中側から切開し、頸椎を縦に切って左右に広げて空間を作り、圧迫されている脊髄を後方に逃がす方法である。

「後縦靱帯骨化症の多くの患者さんに対しては、椎弓形成術での治療が可能です。ただし、骨化が大きい場合や、骨化が連続しておらず、骨と骨の間で動きがみられる場合は、椎弓形成術では圧迫が取り切れなかったり、手術後も骨化した部分が動いたりすることで脊髄への障害が続き、症状が改善されない、あるいは悪化することがあります。岡本さんも、骨化がやや大きく、動きがみられたため、骨を広げる除圧に加えて、頸椎の骨の一部を特殊な金属で固定する後方除圧固定術をおこないました」(山崎医師)

「骨を固定」と聞くと、首が動かなくなると考える人もいるようだが、「実際には日常生活に大きな不自由を感じることはほとんどありません」(同)とのこと。

 岡本さんも、術後10日で抜糸をし、2週間後に退院。すぐに仕事に復帰できたという。退院後しばらくは、1カ月に一度受診し、症状の変化、傷や骨の状態などを確認し、経過が安定してからは、3カ月後、半年後と間隔をあけていく。手の動かしにくさ、歩きにくさなどの神経症状は、術後1年ほどで徐々に回復し、1年後には趣味のゴルフが再開できるまでに回復した。

 後方法の場合、骨化した部分は残してあるため、経年的に骨化が大きくなり再び症状が出現することもある。そのため、1年に一度は受診し、経過を観察していくことが必要だ。

「ただ、後方法でも固定をすると、骨化の増大を抑えられる傾向があり、経過は良好なケースが多くあります」(同)

週刊朝日 2015年4月24日号より抜粋