作家の室井佑月氏は、菅義偉官房長官と米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設に反対している翁長(おなが)雄志知事との初会談の内容について、気になる事があるという。

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 あたしが気になるのは、「で、結局、謝ったのだろうか」。その一点だった。

 なんのことかって? 菅官房長官と翁長沖縄県知事がようやく会ったことよ。

 4月5日付の日本経済新聞電子版によると、「官房長官、沖縄知事と平行線 辺野古移設巡り初会談」という見出しで、中身のほうもお互いにお互いの主張を語っただけのようであった。

 米軍普天間基地の名護市辺野古への移設について、菅長官が「唯一の解決策だ」と理解を求めたらしく、ほんでもって、「『基地問題で最重要なのは、普天間の危険除去だ。辺野古移設の断念は普天間の固定化にもつながる』と訴えた。『政府は関係法令に基づいて辺野古埋め立てを粛々と進めている』と説明した」んだと。

 それに対して翁長さんは、

「『辺野古に新基地はできないと確信を持っている。県民に大きな苦しみを与え、危険除去のために負担しろという話をすること自体が日本国の政治の堕落だ』と反論」し、「昨年の知事選や県内の衆院選4小選挙区で辺野古移設反対派が勝利したことを指摘し『県民の圧倒的な反対の考え方が示された』とも語った」みたいだ。

 そしてそして、「菅長官の『粛々と進める』との発言に関し『上から目線だ』と抗議した」んだってさ。やるぅ~! てか、菅さんはまず、今まで沖縄県民にしてきた子どもじみた意地悪を、謝れっていうんだよ。

 
 その程度のことしか話さないんだったら、なぜずっと翁長知事との面会を拒絶していたの? 去年からずっとおなじことしか話してないじゃんか。

 結局、今月末、安倍首相が訪米するから、その時にアメリカ様に、

「沖縄米軍基地問題は解決済みです」

 そういいたかっただけなんじゃないか。

 翁長知事は安倍首相との会談を求めたみたいだけど、あの人には、さらに会っても無駄かもね。

 だって、安倍さんがこうしたいってことが先にあって、その体面を保つため、彼の取り巻きが右往左往しているようにしか、あたしには見えてこない。

 たとえば安倍さんは、オリンピックを自分の手で招致したいがため、福島第一原発は「アンダーコントロール」されていると発言した。

 その発言は世界中に流れ、結果、今の福島原発の実態はひっそりしか、この国のニュースでは流れなくなった。安倍さんを嘘つきにしちゃならないという、メディア側の忖度(そんたく)か? おかげでこの国の報道の自由度は地に落ちた。

 北朝鮮の拉致問題も然り、景気問題もそうだ。この国の誰だって、拉致被害者を早く返せと思っているし、少しでも景気が良くなればと思ってる。そうなれ! という希望なら、誰だって大声で叫べる。

 安倍さんのためじゃなく、この国のためにどうすべきか、みんながみんな考えなければと思う。

週刊朝日  2015年4月24日号

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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