つんく♂さんがのどの不調を訴えたのは2007年秋。14年3月、がんを公表し、治療のためにタレント活動を休止。9月に体からがんが消えた状態「完全寛解」に至ったと報告したが、翌月、「モーニング娘。」初の米国単独公演の開催中に再発がわかった。

「喉頭がんは他のがんより比較的治りやすく、しっかり治療すれば10年、20年と元気に過ごせる。とはいえ、声を残すことに固執しすぎると命にかかわります」

 そう解説するのは、亀田総合病院(千葉県鴨川市)頭頸部外科部長の岸本誠司医師。つんく♂さんは06年に結婚した12歳年下の元モデルの女性との間に男女の双子と次女がいる。声帯を摘出する道を選んだ一因として、わが子の成長を見届けたいとの思いが強くあったとも想像できる。

 昨年10月半ばに手術で声帯を切除し、その後は自宅で療養しつつ、仕事を再開。また、失った声を取り戻そうと「食道発声法」の練習も始めているという。

 声帯を切除した喉摘者(こうてきしゃ=喉頭全摘出者)は全国に2万~3万人いるとされ、多くは喉頭がんや咽頭がん、食道がんで手術を受けている。その社会復帰を支える東京の市民団体「銀鈴会」の会員は約1100人。全国組織である日本喉摘者団体連合会の会員は約7千人だ。銀鈴会の松山雅則会長が言う。

「多くは食道発声法で声を取り戻しています。若い人だと早くに社会復帰を果たし、職場で普通に会話をしたり、電話をとったりしています」

 食道発声法は、食道に入れた空気を吐き出す際、のどの粘膜を震わせて声を出す。ほかには、電動式の人工喉頭(EL)をあごの下に密着させて発声する「EL法」、気管と食道の間にバイパスを作って専用器具を挿入して発声する「シャント法」などがある。

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