小児がんに共通するこの問題を解消すべく、症例を集約させて診療経験を重ねる目的で「小児がん拠点病院」が検討され、2013年に15の医療機関が指定されました。年間症例数や専門的な医師の充実度、臨床研究などが選考基準になっており、現在は拠点病院を中心に地域における協力病院との連携が進められています。一般の治療法で対応できるものは協力病院、難治症例は拠点病院というように役割分担するなどして、小児がん医療全体の底上げを図ることが必要です。

 中でも大きな課題は、現在治すことができない患者さんをどう救っていくかということ。がんは子どもの病死の原因のトップ、日本では毎日2人ががんで亡くなっていることになります。白血病も8割は治るのだからと考えてしまいがちですが、昨年発表された論文では欧米の先進国の治癒率は9割に達していると報告されています。この1割の差は、新しい有効な治療法の開発が積極的に進められているか否か。実際日本で治せなくて、海外での治療を希望する難治の白血病患者もいます。日本も大学病院を中心に治療に直結する研究を進めていく必要があるでしょう。親にとって最大の不幸は、子どもが亡くなること。治癒率を1割上げれば、約70人の子どもを救うことができるのです。

週刊朝日 2015年4月17日号