NHKの15年度の「国内放送番組編集の基本計画」では、国内放送と国際放送との連携の強化が目標として記され、新3カ年経営計画(15~17年度)の重点目標の一つとして、国際放送の拡充が挙げられている。国際放送の予算も年々増加し、15年度は前年比54億円増の225億円となった。

「籾井会長は国際放送を統括する板野裕爾専務理事と親しいことで知られています。板野専務理事は籾井会長が就任した際、全理事に日付を空欄にした辞表を提出させていた一件でも反対しなかった人物です」(NHK関係者C氏)

 さらに自民党関係者によると、籾井会長は同委員会の原田義昭委員長とも近しいという。

「2人は共に福岡県山田町(現・嘉麻市)の出身で年齢は一つ違い。個人的な付き合いもあります」

 2月13日、自民党本部に籾井会長が予算の説明で訪れた際、原田委員長は「もう少し自信を持って国益に沿った情報を発信してほしい」と意見していた。

 元NHKプロデューサーでノンフィクション作家の中田整一氏はこう言う。

「僕がいたころは、NHKが国際放送で国から予算を受け取っていいのかという議論が常にありました。現役の職員にはもっと問題意識を持ってほしい」

 板野専務理事を直撃すると、「広報を通してほしい」。

 NHK広報局に取材を申し込むと、「国際放送については、NHKが自主的に検討を進め、新3カ年経営計画に基づき、自ら取り組む方針を決めております」。

 NHKを国会で追及した民主党の階猛衆院議員がこう言う。

「国際放送に限らず、国内放送に対しても働きかけを強めているのが、安倍政権のスタンス。不都合な情報を事前に鎮火しようとする」

 政府とNHKの距離が試されていると言える。

(本誌取材班=福田雄一、小泉耕平/今西憲之)

週刊朝日 2015年4月17日号より抜粋