「そもそもインフレに固執すること自体が間違い。アベノミクスが目指している円安と物価上昇も、長期的にはむしろ国を貧しくする。需要を弱くしたのは将来不安から消費を手控える『デフレマインド』であって、物価下落そのものではないのです」(小幡氏)

 日銀は物価上昇率を差し引いた実質金利の低下を狙っている。だが、これも間違っているという。企業への融資や住宅ローンの金利はすでに十分低いうえ、税制優遇などで設備投資も進んでおり、多少金利が下がったところで需要の先食いが起こるにすぎないからだ。

 日銀出身で経済アナリストの池田健三郎氏は、「黒田バズーカの出口戦略への切り替えがターニングポイント」という。

「今は日銀が国債を買い上げて、市中に通貨供給量を増やすことで金利を低く抑えています。物価上昇率が目標に達したとき、緩和縮小へと政策転換が行われる。そのときに日本国債の信認に揺らぎが生ずれば、金利の上昇が加速するだけでなく、利払い負担に財政が耐えられなくなるリスクもないとはいえない」

 17年4月に予定される消費税10%への増税と、金融引き締めが同じタイミングで起こると、財政危機のシナリオが現実味を帯びると警告する。

週刊朝日 2015年4月17日号