菌が繁殖した温水を肛門(こうもん)に当てることで症状がひどくなるという説もあるが、「確認できていない」(田爪氏、感染免疫学が専門の東京医科歯科大学名誉教授の藤田紘一郎氏)という。なお、細菌の数を減らすためには、各メーカーが近年販売し始めた瞬間湯沸かし式の温水洗浄便座を使用するのが有効だという。

 それよりも、この調査が雄弁に物語る深刻な問題がある。温水洗浄で飛び散った便が水滴に混じってお尻にくっつき、それをトイレットペーパーで拭くとお尻と手の両方に大腸菌などが広がるというのだ。田爪氏は警告する。

「医療従事者は患者さんの診察で毎回手袋を使っては替えなければなりません。手洗いも大切。便器の上に手洗いがついていないタイプのトイレでは、ドアノブに菌がつくと予測されます。また尿道口と肛門の近い女性は、膀胱(ぼうこう)炎のリスクも高まります」

 くらた医院(京都市)院長で肛門内科を標榜する倉田正先生は、今後はますます“拭き方”が重要視されていくだろうと警鐘を鳴らす。なお、くらた医院では次のように指導する。

[1]広範囲にこするのではなく、肛門から頭を出した便をつまむように取る[2]そして便が広がらないように、紙を肛門に当てながら、肛門を閉める――。便をつまみ肛門を閉めるなんて……。うう、難しい。

週刊朝日  2015年4月10日号より抜粋