会場入りした時から、いつもどおりの攻める表情だったという羽生。その一挙一動をカメラが追いかけた (c)朝日新聞社 @@写禁
会場入りした時から、いつもどおりの攻める表情だったという羽生。その一挙一動をカメラが追いかけた (c)朝日新聞社 @@写禁

 2度の4回転ジャンプミスに、客席がざわめいた。

 3月28日、フィギュアスケートの世界選手権(中国・上海)で、羽生結弦(20)が惜しくも2位となった。

 現地で取材したスポーツ記者はこう話す。

「むしろ、当たり前なんです。『日本人初連覇』と騒がれましたが、ボロボロの体で勝てるほうがおかしい。それでも4回転以外は成功させて立派でした。今度こそゆっくり休んでほしい」

 昨年、他の選手と激突して流血した“因縁のリンク”で、すべての視線が、羽生に集まっていた。

 昨年末の全日本選手権で3連覇した直後に、尿膜管遺残症の手術で下腹部を4センチ切った。1カ月半後に氷上練習を再開した矢先に右足首を捻挫。本格的な練習を再開したのは3月初めだったという。

 公式練習から固唾(かたず)をのんで見ていた記者たちは、今季自己最高得点となったショートプログラム(SP)の演技に驚いたという。

「練習ではジャンプは跳んでいましたが、スケーティングでは好調のデニス・テンや小塚崇彦に比べると、海外メディアも『ジャンプだけか』という印象を受けていたようでした。それに、曲に合わせるとジャンプもうまくいかなかった。ところが、本番ではジャンプも跳んだ上に、全体的に気持ちの入った見事な演技でした」(スポーツ記者)

 今大会の“主役”は、表でも裏でも羽生だった。

次のページ