「総会を見て、先代には老いを感じました。もう経営を任せてられないと思いました。前からワンマンでしたがカリスマ性がありましたからね。もう時代が違うということでしょうか。残念ですが……」

 久美子社長で決着を見たものの、大塚一族のお家騒動は、そう簡単にはおさまらない。同族経営に詳しいファミリー・ビジネス・ネットワーク・ジャパンの高梨一郎氏は解説する。

「これからが大変です。勝久氏は大株主ということには変わりない。会社の外から株主として批判を繰り返すことになると、会社にとっては有益ではない。そこで、根本的なコミュニケーションの回復が不可欠となります」

 同じく、親子で揉めた企業に赤福がある。大塚家具と赤福の違いについては、こう分析する。

「大塚家具も赤福も先代にカリスマ性があった。カリスマ性があって成功体験があったからこそ、自分のやり方が正しいと信じて、次世代がやることに口を出したくなってしまうものです。赤福は上場していませんでしたが、大塚家具は上場していたので、こんなにも表面化してしまったんですね」

 総会では久美子氏勝利で父娘の争いは決着。次は、法廷の場で争いが繰り広げられることになる。

 13年、勝久氏はききょう企画を相手取り、社債の償還を求める裁判を起こしている。さらに今年は、大塚家の資産管理会社「ききょう企画」の株を、違法な手段で久美子氏が手に入れているといった趣旨の裁判を起こしている。それぞれ口頭弁論が4月、5月にある予定だ。

「強烈なキャラクターのご両親ですね」と総会後の会見で質問された久美子氏は、淡々と答えた。

「(両親とは)会社の株主という観点からは誠実にコミュニケーションをしていく。個人的なことに関しては、この場では回答を差し控えたいと思っております」

 株主総会直後、大塚家具の株価は数分で227円も急騰し、その後、再び、売られた。戦い済んで日が暮れて、一族が同じ屋根の下で再び笑いあう日は来るのだろうか。

(本誌・永野原梨香、牧野めぐみ)

週刊朝日 2015年4月10日号より抜粋