2014年の北京APECで一応は握手をした安倍首相と習主席 (c)朝日新聞社 @@写禁
2014年の北京APECで一応は握手をした安倍首相と習主席 (c)朝日新聞社 @@写禁

 中国の「安倍談話」に対する牽制が続いている。3月2日には、国政の助言機関とされる「全国政治協商会議」が会見を開き、安倍談話に言及した。

「私たちは日本政府の現在の指導者に『第2次世界大戦終了後70年が経ち、歴史を深く反省する時がきた』と申し上げたい」

 これに先立つ2月23日にも、中国の王毅外相が国連安保理の公開討論会での演説のなかで、「過去の侵略の罪のごまかしを試みる者がいる」と指摘した。名指しはしなかったものの、安倍首相へのメッセージであることは明らかだ。

「政冷経熱」の「政冷」は依然として続いているが、それが経済面にも及ぶのではと思わせる中国撤退の動きが相次いでいる。

 2月5日、時計メーカー・シチズンホールディングスの中国合弁会社「西鉄城精密」が広州市の工場を閉鎖、従業員を解雇した。昨年末にも米マイクロソフトが北京市と東莞市の携帯電話工場をベトナムのハノイ工場に移すと発表したこともあって中国メディアの一部が反応し、「国内人件費の上昇などにより、労働集約型の工場は東南アジアに移転されている」と報じた。

 投資も減少している。昨年7月に中国商務省が発表した統計では、日本の対中投資(2014年1~6月)は24億ドルで、前年同期比約49%減と激しく落ち込んだ。「対中投資半減」のニュースは日本メディアでも大きく取り上げられた。日本貿易振興機構(ジェトロ)海外調査部・中国北アジア課の箱崎大課長が解説する。

「日本の対中投資は05年に一段落したんです。これは日本の大手自動車メーカーが広東省に出そろった時期と合致し、投資が一巡したと考えられる。その後、08年のリーマンショックを経て、11~12年に再び増加に転じました」

 ただし、この動きを「対中投資ブームの再来」ととらえるのは疑問だという。10年5月ごろから円高基調となり、輸出の不利と投資意欲の高まりから日本の対外投資全体が伸び、結果として中国分も増えたのが真相のようだ。

「投資のピークである13年上期と比較すれば、下期は確かに対中投資『半減』ですけれども、その後、大きな変化は見られない。対中投資が増加し始める11年より前の水準に戻ったと見るべきでしょう」

 実際は一進一退というわけだが、少なくとも日本企業の中国に対する“熱視線”は失われつつあるようだ。

週刊朝日 2015年4月3日号より抜粋