犠牲になった乗客295人(行方不明者9人除く)のうち251人は修学旅行で乗り合わせた10代の高校生だった。沈みゆく船内を写した携帯動画が公開されると、韓国社会は重苦しく、沈痛な雰囲気に覆われた。

 船が沈んでいったとき、その様子はリアルタイムで報道されたが、その間、政府は生存・死亡者数すらまともに確認できず、対応は二転三転、後手に回った。

「このときの喪失感は言葉では言い表せない。さらに憂鬱にさせられたのが、事故後、真相究明などを盛り込んだセウォル号特別法を巡る野党との対立で、これで国会はストップし、政治の空白を作った。年末にかけては側近の国政介入疑惑も浮上して、そんな右往左往ぶりに不信感が増していた。そこへ増税なしと言っていたのに年末精算(日本の年末調整)では前よりも多く税金を払わされたし、景気はずっと上向かない。組閣の人事も検証不足で迷走ばかり。もう嫌気がさしてきている」(30代の会社員女性)

 大統領の任期中、世論は、期待、失望、怒り、嫌気、そして無関心の5段階で進むといわれる。3年目は普通なら失望の時期に当たるが、朴大統領の場合は、「もうそれを超えて怒りに達している」と前出の金教授は言う。

「不信が累積していたところへ、今までの積もり積もった不満が一気に噴き出た。支持率低下はコミュニケーション不足や経済政策などとも分析されたが、直接的には、所得税の新制度導入で会社員を圧迫し、そして冷え込んだままの内需は、リタイアして自営業に転じている支持層のベビーブーマー世代(1955~63年生まれ)を苦しめ続け、さらに今年行うとされる公務員の年金改革では公務員を悩ませている。今までじっと耐えて支持してきた人たちは不利益ばかり被って、懐は一向に潤わない。そんな怒りが爆発したんです」

週刊朝日 2015年4月3日号より抜粋