久美子は今回の騒動の焦点は、コーポレート・ガバナンスの問題だと訴えていますが、そこだとは、どうしても私には思えません。

 実際に私の株式保有割合は20%もありません。会社を思うままに支配できるものではなく、多くの金融機関や古くからの取引先などに株を持っていただいている。業績の悪化や会社の私物化を行えば、いつ解任されてもおかしくない。

 そもそもコーポレート・ガバナンスに問題があったのであれば、株主総会招集通知に添付されている事業報告にもそのことを書かなければなりません。

 しかし、発送された事業報告には一切ない。あくまで会社を自分主導で支配するための方便に過ぎません。社員にはもう少しの我慢だと言っています。5年間も経営に携わってきた久美子に対して、社員がノーを突きつける。その覚悟がどれほどのものか、わかってほしいと思います。

 優秀な社員たちは大塚家具の自慢であり、企業価値の源泉です。一部では「ワンマン」だとか「粛清人事をやった」などと言われていますが、真実は違います。もちろん、ビジネスは真剣勝負で妥協や怠慢は許されません。社員から見れば厳しい側面もあるでしょう。

 しかし、私は、社員たちの力を信じて仕事を任せ、一緒に大塚家具を育てていくスタイルです。社員を一人もクビにしたことなどありませんし、昨年7月の社長解任後の人事は、全て栄転・昇進や通常の人事ローテーションです。

 経営者として最も誇れることは何にもまして今の大塚家具の社員たちが育ってくれたことです。今回の私の株主提案に関しても、ほぼ全ての幹部社員から支持の表明をもらっていることは、本当に心強いかぎりです。今、私を支援してくれている多くの社員も、通常の会社業務を行いながら、就業時間後や休日を削って自主的に支えてくれています。そうした社員の支えに本当に涙が出ます。

 家具業界団体である家具経済同友会から、私の主導のもとで早期の事態正常化を望むと表明いただきました。家具経済同友会には大塚家具は加盟しておりませんが、大塚家具のことを心配し、叱咤激励をいただいたものです。

 久美子には、中長期的に大塚家具にとって欠かせないステークホルダーの支援がありません。久美子を支持すると言っていた大株主の米ファンド、ブランデス・インベストメント・パートナーズも株式の大半を、株価が上昇したタイミングで売ってしまいました。

 試練を乗り越え、世間、そして最も大切なお客様から、「大塚家具の社員は、よく危機を乗り越えたね。応援するよ」というお言葉を頂戴できるように、粉骨砕身頑張ります。

 そして、株主の皆様には、どちらが会社の永続的な経営にとって重要な提案か、しっかりと見極めていただきたいと思います。

(※注)裁判で久美子氏は、社債については事業承継スキームだとし、償還期限は延長することで合意しており、また、譲渡担保契約に関しては事実認識に誤りがあると主張している。

週刊朝日 2015年4月3日号より抜粋