プロゴルファーの丸山茂樹氏が、デンマーク出身のある選手のゴルフのすごさをアツく語る。

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 いやー、35年ぐらいゴルフに関わってますけど、聞いて驚いちゃいました。

 ヨーロッパツアーの「アフリカオープン」(3月5~8日、南アフリカ・イーストロンドンGC)で、デンマーク出身のモーテン・マドセン(26)という選手が初日を1アンダーで回ったんですけど、この内訳がすごい。

 なんと2イーグル、6バーディーの一方で、4ボギー、1ダブルボギー、1トリプルボギーですって!

 ラウンド中にバーディーとボギーを繰り返すのを、日本では「出入りの激しいゴルフ」なんて言いますけどね。もはやそんなレベルを超えてますよね。

 この日のマドセン君は、根本的に調子が悪かったんだと思います。

 調子がよくない自覚があるのにイーグルが来て、バーディーが来て。なんとなく気持ちが悪いまま、ラウンドしてたんじゃないかなあ。ひとことで言って、地獄のような一日だったと思います。これ以上なく派手に出たり入ったりしながらの1アンダー。それでも2日目から安定感を取り戻して最終的に3位ですから、ものすごくいい勉強になったでしょうね。

 それで思い出しましたけど、タイガー・ウッズ(39)が1997年に初めてマスターズで勝ったときの初日がフロントナイン40のバックナイン30だったなあ。この「30」で波に乗り、18アンダーの圧勝でしたね。

 僕自身のスコアでみなさんに衝撃を与えたなあってのは、2000年6月の全米オープン最終予選(米メリーランド州・ウッドモントCC南コース=パー71)ですね。1日36ホールの長丁場だったんですけど、午前中の18ホールで58を出したんです! 1イーグル、11バーディー、ノーボギー。

 2日に息子の奨王が生まれてね。アメリカの病院は出産翌日に退院ですから、3日に妻の運転で空港まで行ったのを覚えてます。そして5日に58が出た。

 絶好調だったんです。最初の2ホールで連続してバーディーパットを外したんですけど、3番で最初のバーディーが来て、そこからもう怒濤の勢いでした。9番でイーグルが来て29。

 後半も打てばピンにピタリ、そして入るという繰り返し。最後は5、6メートルのイーグルパットを外して29。あれが入ってたら57でしたね。それでもう、午後の18ホールは気持ちが入らない、入らない。フワフワして、地に足がついてないんですね。「こんなことしちゃって、交通事故に遭わないかな?」なんて考えたりして、後半は74。それでも余裕で予選は通りました。

 当時の米PGAツアーの18ホール最少ストローク数が59。予選だから米ツアーの最少記録に公認はされませんでしたけど、結構な騒ぎになりました。

 米ツアーに本格参戦1年目。不安な中で58が出て、初めて「俺もやっていける」という自信がわきました。だから、ほんとに思い出深い出来事ですね。

 最後に僕の近況です。左肩の痛み対策に、1カ月前からインナーマッスルを鍛え始めました。そしたらゴルフをしても左手親指の痛みが出なくなった。だから去年の5倍ぐらいたくさん球を打ててます。自分の中での吉報ですね。

週刊朝日  2015年3月27日号

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丸山茂樹

丸山茂樹

丸山茂樹(まるやま・しげき)/1969年9月12日、千葉県市川市生まれ。日本ツアー通算10賞。2000年から米ツアーに本格参戦し、3勝。02年に伊澤利光プロとのコンビでEMCゴルフワールドカップを制した。リオ五輪に続き東京五輪でもゴルフ日本代表監督を務めた。セガサミーホールディングス所属。

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