プロゴルファーの丸山茂樹氏は、プロスポーツ界のベテラン勢の活躍に感嘆しているという。

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 いやあ、これがメジャーを3度制した男のすごさなんですね。

 米PGAツアーの「ホンダ・クラシック」(2月26日~3月2日、米フロリダ州・PGAナショナル)で、43歳のパドレイグ・ハリントン(アイルランド)が優勝しました。2008年の「全米プロゴルフ選手権」以来、実に7シーズンぶりとなる米ツアー6勝目。21歳の新鋭ダニエル・バーガー(米)を、プレーオフ2ホール目で振り切っての頂点でした。ハリントンは近年、パターのイップスと闘っていました。長いスランプが続き、最近も出れば予選落ち。それでも、ここ一番のチャンスは逃さなかった。

 プレーオフ2ホール目の17番パー3。最終ラウンドのこのホールで、ハリントンはティーショットをグリーン右の池に落としています。だけど、この正念場ではピン奥1メートルへピタリ。一方のバーガーは池ポチャ。これで勝負あった。

 これがトップ10の常連だった選手の強さですよ。経験の違いをまざまざと見せつけました。いま、ゴルフは圧倒的にバーガーの方がうまいと思うんです。でも土壇場に来たときに、経験値の豊富なベテランが力を発揮する。プレーオフのハリントンには、相手のミスを誘うようなすごみがありました。

 僕とハリントンには、何かと接点があるんです。僕が00年と01年シーズンに米ツアーで回ってたときのキャディーがアイルランド人。彼がハリントンと仲がよくてね。それに二人とも同じトレーナーについていた時期があって。だから結構、話をすることも多かったですよ。数え切れないぐらい一緒にラウンドしましたし。

 
 いつも笑顔で、人がよくって。ただゴルフになると神経質でね。集中しきっちゃって、周りが見えなくなるところがある。だから、プレースタイルはいまいち好感を持たれてないかもしれないですね。

 同世代でもありますし、彼のことは結構気になってました。正直、彼もそろそろ厳しくなってきたのかな、なんて。でも、この勝利でマスターズの出場も決まったし、世界ランクも297位から82位にジャンプアップですから。ワンチャンスをものにしたハリントン、アッパレですね。

 そうそう、ベテランといえば、この人を忘れちゃあいけません。

 2月26日、サッカーのキング・カズこと三浦知良さんが48歳の誕生日を迎えられました。所属クラブの横浜FCが用意したお祝いの場に、ワインレッドのスーツ姿で現れたんですってね。さすがキングですよね。

 カズさんとはたまに食事する機会があるんですけど、まあ若いですよ。さわやかだし。絶対に自分を老けさせない何かを持ってますね。仕事でも遊びでも。だからほんとにカッコイイですよ。

「近年ではいちばん体が動いてる」っておっしゃってるみたいですね。ものすごく追い込んでトレーニングする人ですから。あの切れ味がいつまでも続いてほしいですね。

 カズさんって、試合に出てきたら必ず、僕らを「ウォー」って言わせてくれるじゃないですか。あの姿がたまらなくカッコイイ。我々にはとてもマネできません。

週刊朝日 2015年3月20日号

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丸山茂樹

丸山茂樹

丸山茂樹(まるやま・しげき)/1969年9月12日、千葉県市川市生まれ。日本ツアー通算10賞。2000年から米ツアーに本格参戦し、3勝。02年に伊澤利光プロとのコンビでEMCゴルフワールドカップを制した。リオ五輪に続き東京五輪でもゴルフ日本代表監督を務めた。セガサミーホールディングス所属。

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