室井佑月「ゲップが出そうです」そのワケは? 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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室井佑月「ゲップが出そうです」そのワケは?

連載「しがみつく女」

※イメージ写真

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 作家の室井佑月氏は、メディアが伝える情報はどうでもいいものばかりで日本の問題点を取り上げていないとこういう。

*  *  *
 国際NGO「国境なき記者団」(RSF)が2月12日に発表した「2015年報道の自由度ランキング」。日本は去年から順位を二つ下げ、過去最悪の61位だってさ。主要先進国では最低クラスなんだとか。

 文句のつけようがないわな。

 このところ、社会ネタを扱うワイドショーで流しているのはサムスンとLGの社長同士の喧嘩。その前はナッツ姫。もっと前は小保方さんの件だったか。

 小保方さんの件は置いといて、電機会社の社長の喧嘩の話もナッツ姫の話も、お隣の国、韓国のしょうもない話だ。

 ま、両方ともぐふふと笑えるような話だし、嫌韓や嫌中の話題は視聴率を取れるってこともあるようだから、どこの局も取り上げるわな。

 しかし、あたしはたびたび「ん?」と思う。ピックアップされる出来事があるということは、消される出来事もあるわけで、そのジャッジの仕方に「ん?」と思うのだ。

 たとえば2月12日、自衛隊の人たちが読む専門紙「朝雲」にて、

「過激派組織『イスラム国』による日本人人質事件は残念な結果となった。悔しい気持ちはわかるが、自衛隊が人質を救出できるようにすべきとの国会質問は現実味に欠けている」

 との記事が載った。

「国会質問を聞いていると、陸上自衛隊の能力を強化し、現行法を改正すれば、人質救出作戦は可能であるかのような内容だ。国民に誤解を与える無責任な質問と言っていい」と。

 安倍首相は1月末のNHKの日曜討論で、

「この(テロ殺害事件の)ように海外で邦人が危害に遭ったとき、自衛隊が救出できるための法整備をしっかりする」

 そうはっきり発言したし、このところ国会でもそういう議論が行われている。

 国会はこの国の指針を示す人たちの討論なわけで、朝雲の記事が超レアな話題として取り上げられないのはおかしくないか? サムスンとLGの喧嘩より、安倍さんと自衛隊のまさかの仲間割れのほうが、視聴者にとってもダイレクトに自分に繋がる話なので見ごたえがあるだろう。

 こういうことがよく起こり、結果、自分の国の問題点がよくわからない人が増えているように思う。

 一昨年2月にWHOが福島原発事故について発表した、それまでの意見をくつがえすような報告書(なぜか日本語版はない)を、なぜメディアは取り上げないのか。辺野古基地問題だって、もっと取り上げてもいいはずだ。

 ナッツ姫に対して詳しくなることと、日本の問題点を知ることと、どちらがあたしたちのためになる?

 15年度の政府広報予算は前年度予算から18億円アップの83億400万円になるらしいから(民主の野田さんのときは41億円だって)、金もらって、ますますメディアは萎縮するだろうな。ほんで、どうでもいい穴埋め情報が多くなる。

週刊朝日 2015年3月13日号


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室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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