先日の米PGAツアーでの松山英樹選手の活躍を、ゴルファーの丸山茂樹氏は「だいぶ自分に余裕が出てきたのでは?」と話す。

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 松山英樹(23)の我慢強さが光った試合でした。

 米PGAツアーの「ノーザントラスト・オープン」(2月19~22日、米カリフォルニア州リビエラCC)で、英樹は4位に入りました。1打差でプレーオフ進出を逃しましたが、立派、立派ですよ。

 というのも、初日のショットに納得がいかずに「終わってます」なんてコメントを残しながらも、耐えに耐えて70、72、70と、トップに7打差の19位で最終日。そして「サンデー英樹」のニックネームそのままに、67と猛烈に追い上げたんですから。

 まあ、あの若さでほんとに我慢強いですよね。「一つでも上の順位へいきたい」と思って、気持ちを緩めずにやれてる証拠でしょうね。メンタル的な部分っていうのも、英樹の場合は覚えるのが早いというか。若気の至りでガタガタいくってのが、あんまりないじゃないですか。

 我慢すれば上位にいけるってコースでしっかり我慢できるあたりが、一流のプレーヤーですよね。僕なんか、英樹の年齢では、とてもあんなに我慢が利かなかったですよ。

 試合会場のリビエラCCは、僕がいま滞在してる自宅から車で15分なんです。だから今回も、現地で観戦してきました。

 英樹は飛距離がもう抜群でしたね。アイアンのキレ味もそう。本人が「ダメだ」「ダメだ」と言いながらあの成績なんで、僕も正直、どこを褒めていいのか分からないってのはあるんですけどね。僕から見たら、いいゴルフだと思いますよ、そりゃ。ほんとに英樹の中で完璧になったら、どうなっちゃうんだろうと。そういう印象を受けるようなプレーですよね。

 試合の週の月曜日には、「チーム松山」のメンバーたちがウチに来て、去年に続いてバーベキューをしたんです。そのときに英樹といろいろ話しましたけど、以前よりだいぶ話を弾ませるのが上手になりましたよ。もともと言葉が少ないタイプですけど、少しずつ米ツアーのメンバー内でのウケもよくなってきてアメリカでやっていく中で、そういうコミュニケーションの部分も必要だと感じたんでしょう。今後もこの路線でいってほしいです。

 リビエラでの初日が終わったあとには、ギャラリーにサインしてました。だいぶ自分に余裕が出てきたんじゃないでしょうか。

 これでもう、今シーズン5度目のトップ10ですか。しかも今年に入って5試合で、3度もトップ5なんですからね。この安定感たるや、すごいと言うしかないですよ。

 英樹は古傷である左手首に違和感があるってことで、大事をとって次の「ホンダ・クラシック」(2月26日~3月1日)は欠場しました。それでいいんですよ。もはや来シーズンのシード権どうこうを考えなくていい立場なんですから。意外とおなかいっぱいっちゃ、おなかいっぱいなんじゃないですか? ハハハハハ。

 もう今シーズンの獲得賞金が約161万ドルまでいってますからね。たった10試合ですよ、10試合で。ものすごいですよねえ。ちょっとだけ気が早いかもしれませんけど、4月のマスターズが楽しみになってきました。

週刊朝日 2015年3月13日号

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丸山茂樹

丸山茂樹

丸山茂樹(まるやま・しげき)/1969年9月12日、千葉県市川市生まれ。日本ツアー通算10賞。2000年から米ツアーに本格参戦し、3勝。02年に伊澤利光プロとのコンビでEMCゴルフワールドカップを制した。リオ五輪に続き東京五輪でもゴルフ日本代表監督を務めた。セガサミーホールディングス所属。

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