ボウリング場などを経営するラウンドワン(撮影/写真部・大嶋千尋)
ボウリング場などを経営するラウンドワン(撮影/写真部・大嶋千尋)

 虎の子のお金を銀行に預けても利息はゼロ同然。だが、株の配当利回りは東証1部市場の平均値で1%超。しかも3~4%台もゴロゴロしている。3月決算企業の配当を得るには、月末までに仕込まなくてはいけない。「買ってもいい高配当利回り株」の選び方とその具体例について、専門家に聞いてみたい。

 トップバッターを務めるのは、ネット証券最大手・SBI証券投資調査部シニアマーケットアナリストの藤本誠之さんだ。

「私が注目したのは、ニッチな業界の勝ち組で手堅く収益を稼ぎながら、2.5%以上の配当を支払っている企業です。ちゃんと儲けているにもかかわらず、ニッチだと知名度が低いため株価が割安な水準にされたままになりがちだからです」

 業績などと比較して株価が割安だと、おのずと配当利回りは高くなる。それでいて、業績不振などといった悪い材料も乏しいことから、さらに株価が下げるリスクは低そうだ。つまり、比較的安心して投資できる銘柄だと言える。

 銘柄の絞り込みに当たって藤本さんは次の三つの条件を設定した。

[1]3月決算企業
[2]配当利回り2.5%以上
[3]前期比で増収増益

 その結果、約3500社の上場銘柄から191社が抽出された。さらに藤本さんが個々の企業プロフィルや業界内における力関係などを吟味し、最終的に7社を選び抜いた(下の表[1])。

「イチネンホールディングスは自動車のリースや修理・メンテナンス、燃料販売といった地味な事業を手掛けているものの、M&Aに積極的で業績も好調です。テレビCM制作大手のAOI Pro.はネット上の動画CMに関する需要が拡大しているうえ、アジアに進出した日系企業からの現地向けCMの受注も伸びています」(藤本さん)

 電線やエアコン用ホースなどを扱う専門商社の因幡電機産業も一般の読者にはなじみがないかも。だが、収益力の高さはピカイチで、「猛暑なら業績が大きく上振れする可能性が高い」(同)というオマケもついている。カテーテルなどの使い捨て医療器具製造大手のニプロにしても、知名度は低く、同社が人工腎臓で世界的なシェアを獲得していることを知らない人も少なくない。

「円安は海外旅行にとって逆風だが、ニッコウトラベルは、金銭的に余裕のあるシニア層向けのパッケージツアーに特化しており、むしろ足元の業績は好調。知る人ぞ知ると言えば、フライパンなどの家庭用品の卸売りを営む中山福。この商売を全国展開している希有な存在で、小売業界で進む再編・統合に伴う仕入れ先の一本化が追い風となっています」(同)

 残るラウンドワンはボウリングをはじめとする複合レジャー施設を運営し、比較的知名度があるものの、前期が最終赤字だったため、株式市場においては人気が低迷していた。だが、久々に所得が拡大傾向を示しつつあり、レジャーへの支出も増えることが期待されるという。

[1]藤本さんが注目する 「地味で株価が割安→高配当」銘柄
証券コード/銘柄名/株価(円)/配当利回り(%)/事業内容
9619/イチネンホールディングス/1034/2.9/自動車のリースや修理・メンテナンス、燃料販売などを手広く展開
9607/AOI Pro./824/2.79/テレビCMを制作する大手で、自前のスタジオ保有が強み
9934/因幡電機産業/4160/2.86/電線・配線器具やエアコン用のホースなどを扱う専門商社
8086/ニプロ/1132/2.87/使い捨て医療器具の大手で、人工腎臓で世界有数のシェア
9373/ニッコウトラベル/358/2.51/シニア層向けのパッケージツアーを得意とする旅行代理店
7442/中山福/895/3.02/フライパンをはじめとする家庭用品の卸売りを全国規模で展開
4680/ラウンドワン/683/2.93/ボウリング、カラオケなどの複合型レジャー施設を全国で運営
※2月27日時点

週刊朝日 2015年3月13日号より抜粋