※イメージ写真
※イメージ写真

 受験の結果が続々と届いている。見事「サクラ咲ク」ならいいが、子供や孫に「サクラ散ル」という通知がきたとき、家族はどう対応すればいいのだろうか。場合によっては、精神病などを発症してしまうこともある。親や祖父母ら家族や周囲の受け止め方が、大きな影響を与えているのだ。

 では、受験を失敗した子供や孫を追い込まないようにするため、どのように接すればいいのか。緑鐵受験指導ゼミナール代表で精神科医の和田秀樹さんはこう話す。

「もし、子や孫が受験に失敗して浪人の道を選ぶなら、少しでも気持ちよく進める方向性を探るべきです。浪人して、もっといい大学に行ける人はいる。『来年、頑張ってあの大学に入ったほうが就職にもよさそうだ』といった前向きな青写真を見せ、それを励みにしたらいいのです。受験に失敗しても社会で活躍している人の成功談などを聞かせてあげるのもよいでしょう」

 今は大学の多くで受験時の「成績開示」ができるので、合格ラインまであと何点足りなかったかを知り、「1年であと○点伸ばせばいい」と前向きな言い方をするのもいいという。

 河合塾本郷校校舎長の高野英悟さんは、本命受験で失敗し、「第1志望以外の大学に進学」する学生への対応についてこう話す。

「『大学院で志望校を目指そう』とアドバイスしたり、『多少の道のりは違っても、やることは変わらない』と話します。一番大事なのは本人の意思です。大学卒業後も、どう生きたいのか、ということまで聞くようにしています」

 銀座泰明クリニック院長で精神科医の茅野分(ちのぶん)さんは、落ち込んでいる子供には、気持ちを吐露させることも効果的だという。その聞き出し方にもポイントがある。

「子供の心に寄り添うことが大事なので、こちらがしゃべるのは1、2割にとどめて、あとはオープンクエスチョン。イエスかノーかを問うのではなく、『どう?』と尋ねるのです。英語でいう『HOW』ですね。それが、なぜ? どうして?と『WHY』で問い詰める形にするのはダメです」

 茅野さんは、家族が受験生を追い込んでしまう事例も目にしてきた。

「受験に失敗しても、こうであってもいいし、ああであってもいいと、親が広い許容度で受け止められればいい。それなのに、あそこの大学でなければとか、必ず現役でとか、『ねばならない』と親が言い聞かせていると、そうでなかったときの選択肢が考えられなくなってしまうのです」

 近著に『逆境に弱い人、逆境に強い人』がある加藤諦三(たいぞう)・早稲田大学名誉教授(心理学)は、不合格通知が来たときが、「子育ての分かれ目」だと言う。ここで、悪い結果をありのままに受け入れ、「この機会に困難を乗り越えることを教えなければ」と思う親と、不合格ということで子供に失望する親がいる。そして、子供の受験の失敗にビクビクする親は、子供に関心があるわけではなく、自分に関心があるのだと言う。

「それを“教育熱心”だと言うのはとんでもない。『親の成功』に自己執着しているだけで、親のナルシシズムです」

 加藤さんは、そもそも親が不合格を「大変なこと」だと思うから、子供も大変なことだと感じるようになるのだと言う。大学受験に落ちても、半年経つと受けた学校すら忘れる人もいれば、自殺するほど思いつめる人もいる。落ちたという事実が問題ではなく、それをどう解釈するかだ。その解釈の違いは、“所属感”に影響されると話す。

「劣等感の原因は、所属感の欠如です。例えば自分の所属する集団(家族)が、A大学に落ちたことを受け入れられない集団だったら、それは問題になってしまう。自分にとって重要な集団、つまり家族が失敗と考えるかどうかなのです。人間が一番恐れるのは、“孤立”と“追放”です。だからこそ、親は『落ちても、受かっても、お前はうちの子供だ』と言ってあげることが大事なのです」

週刊朝日 2015年3月13日号より抜粋